鑑賞眼

オペラ「チェネレントラ」新国立劇場 圧巻の歌声と華やかな舞台で魅了

オペラ「チャネレントラ」(寺司正彦撮影、新国立劇場提供)
オペラ「チャネレントラ」(寺司正彦撮影、新国立劇場提供)

新国立劇場の新シーズンのオープニングを飾ったのは、ロッシーニの「チェネレントラ」。チェネレントラとは、イタリア語でシンデレラ(灰かぶり娘)のこと。台本はヤコボ・フェレッティで童話のシンデレラのような魔法は登場せず、主人公は零落した男爵家に嫁いだ後妻の連れ子という設定だ。

継父となった男爵や継姉たちから〝チェネレントラ〟と呼ばれ、使用人のように扱われる主人公のアンジェリーナは、〝白馬の王子さま〟に幸せにしてもらうという男性に依存して生きる女性ではなく、自分の意志に従い、自ら幸せをつかみにいく能動的な女性として描かれ、共感を覚える。

今回、演出を手掛けた粟國淳(あぐに・じゅん)は、イタリア映画の黄金時代(1950年代~70年代)のチネチッタ(映画撮影スタジオ)に舞台を移し、劇中劇という作りにした。そのせいか舞台も、衣装もカラフルできらびやかだ。

オペラ「チャネレントラ」(寺司正彦撮影、新国立劇場提供)
オペラ「チャネレントラ」(寺司正彦撮影、新国立劇場提供)

そして粟國版ではラミーロ王子が映画王の御曹司で映画プロデューサー、王子の教育係で哲学者のアリドーロは映画監督となり、彼らは「チェネレントラ」という映画のヒロイン役を探しているという設定。オーディションを受けに来た継姉たちの荷物持ちとしてアンジェリーナが現れるという展開だ。

アンジェリーナ役は、イタリアを拠点にオペラの殿堂「ミラノ・スカラ座」など欧州の舞台で活躍する脇園彩(メゾソプラノ)。柔らかくて艶やかな声がどこまでも耳に心地良い。継父や継姉たちにいじめられてもめげず、勝ち気で明るいアンジェリーナ役にぴったりだ。

ラミーロ王子役のルネ・バルベラ(テノール)も清らかな高音が響かせ、会場を圧倒させた。とくに2幕のアリアで繰り出したハイCの最高音は、どこまでも澄んでいた。歌い終わった後、アンコールを求める拍手がいつまでも鳴り止まず、バルベラが再び舞台に立ち、同じアリアを難なく披露したのには驚かされた(11日所見)。

根本卓也のチェンバロも遊び心満載で、オペラなどの名曲を取り入れ、会場をわかせていた。城谷正博指揮による東京フィルハーモニー交響楽団の演奏、そして奇抜なファッションに身を包んだ新国立劇場合唱団が舞台を盛り上げていたことも明記しておきたい。

10月1、3、6、9、11、13日。東京都渋谷区の新国立劇場オペラパレス。(水沼啓子)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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