話の肖像画

元ソニーCEO、クオンタムリープ会長・出井伸之(83)(20) 企業統治改革の先導役に

(蔵賢斗撮影)
(蔵賢斗撮影)

《平成9年、ソニーは取締役会の改革を行い、「執行役員」制度を日本で初めて導入した。監督と執行の機能を分けるのが目的で、この取り組みは他の国内企業に広がっていった》


米国事業の経営体制を刷新する一方、日本の本社のコーポレートガバナンス(企業統治)の改革も進めました。デジタル社会に向けて会社を変革するには、執行判断の迅速化が必要だったからです。

当時の商法には、「取締役会が業務執行を決し、取締役の職務執行を監督する」とありました。監督する人と執行する人が同じということに矛盾を感じました。

僕はゼネラル・モーターズやネスレなど欧米の先進企業の社外取締役を務め、企業統治を勉強しました。そして重要なのは自社に合った企業統治の形を考えることだと気付きました。

ソニーには取締役が約40人もいたのですが、有効な議論がなされているとは思えませんでした。そこで取締役会は監督の立場にあることを明確にし、社内の業務執行担当者として新たに執行役員という役職をつくり、取締役会から法の許す範囲で、業務執行の権限を渡してもらうことにしました。

その上で、社内の業務執行担当者には取締役から外れてもらい、取締役会は代表権のある執行役員と社外取締役で構成される形に変えました。

悩んだのが、「サラリーマンの頂点は取締役」という意識への対処でした。僕が新しい役職名に「執行役員」と「役員」を入れたのも、その点からの配慮でした。取締役から執行役員になる方々の家族に、会長の大賀典雄さんから「サラリーマンの頂点は執行役員です」という手紙も出していただきました。