長州正論

斎藤勉論説顧問講演詳報 周辺国情勢に「政治に危機感足りない」

長州「正論」懇話会の第37回講演会で講演する産経新聞の斎藤勉論説顧問 =20日午後、山口県下関市(中村雅和撮影)
長州「正論」懇話会の第37回講演会で講演する産経新聞の斎藤勉論説顧問 =20日午後、山口県下関市(中村雅和撮影)

山口県下関市の市生涯学習プラザで20日に開かれた長州「正論」懇話会の第37回講演会では、産経新聞の斎藤勉論説顧問が「ソ連崩壊30年と世界」と題して講演した。対露関係を中心に、対外姿勢を強める中国や、ミサイルや核開発問題に揺れる朝鮮半島情勢などに触れ「日本は戦後最大の危機に直面している」と警鐘を鳴らした。講演の主な内容は次の通り。

ソ連崩壊の前後5年半と、そしてロシアのプーチン政権成立直後の3年と計8年半ほど、モスクワに駐在していた。そこで一番感じたのは、スターリンという指導者の呪縛(じゅばく)が解けていないということだ。

プーチン政権は、スターリンによる独裁のひどさをそのまま継承した体制だ。

プーチン大統領は、共産主義体制の崩壊を2度経験している。1度目は赴任していた東ドイツでのベルリンの壁崩壊、そして2度目はソ連崩壊だ。プーチン氏は2005年「ソ連邦の解体は20世紀最大の地政学的大惨事だ」と語っているが、その経験が悔しくて悔しくて仕方がないのだ。だから、ソ連を形成していたロシアの周辺国の領土を侵した。南オセチアへの侵攻やクリミア半島の併合は「失地回復」を目指したものだ。

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そのようなロシアの振る舞いを、習近平国家主席(中国共産党総書記)が率いる中国もまねをしている。

中国は、習氏が唱える「中国の夢」とのスローガンのもと、清王朝が西欧列強に虫食い状に奪われていった領土を取り返した上で、南シナ海を押さえ、とうとう台湾に手を伸ばしている。台湾の問題は尖閣諸島(沖縄県石垣市)にも直結する。日本にとっても、目の前の問題だ。

中露両国は、民族弾圧を行っているという点でも同じだ。「内政問題」として国際社会からの批判を受け付けないが、人権侵害はひっきりなしに起きている。両国の体制が引き起こしていることは「最凶の人災」とさえ言える。

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日本は、このような国々に周辺を囲まれている。そこに、朝鮮半島も含めれば危機的な状況だ。

北朝鮮は菅義偉首相から岸田文雄首相への交代や、その後の衆院選という空白を狙ったのか、鉄道車両からのミサイル発射訓練や、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を繰り返している。

また、英紙フィナンシャル・タイムズは、中国が核弾頭搭載可能な極超音速兵器の発射実験を行ったと報じた。中国当局は「通常の宇宙船実験」と否定したが、ちなみにロシアはすでに、同種の兵器を開発したと発表している。

このような国際環境に対し、日本の政治家に危機感が足りないように感じる。安全保障についてほとんど発言しない政党や、今回の総選挙で安保法制を廃止すると公約している政党すらある。

国の安全が保障されなければ、いかなる福祉も保障されることはない。政治はまず、国益、国家主権を守るものでなくてはならない。

ソ連共産主義体制の崩壊から30年もたったこの世界で、ソ連を倒したアメリカと同盟を組んでいる日本で、まかり間違ったら共産党が絡む政権が生まれるかもしれないという状態にある。かつてソ連共産党が行い、中国共産党が現在進行形で行っている間違いを繰り返してしまうのではないかと大変懸念している。

長州「正論」懇話会 「中露の民族弾圧、最凶の人災」 斎藤勉・本紙論説顧問