新生銀、SBIと火花 株主争奪戦では苦境に

新生銀行本店が入るビル=東京都中央区
新生銀行本店が入るビル=東京都中央区

新生銀行は21日、SBIホールディングスのTOB(株式公開買い付け)に反対を表明し、買収防衛策の発動へ動き出した。両社は企業価値の向上や公的資金の返済をめぐり火花を散らしているが、新生銀はSBIへの対抗上、不可欠な株価を引き上げる具体案を明確に描けておらず、株主の支持争奪戦になれば苦境に立たされそうだ。

「(企業)価値向上に向けての施策がよくわからなかった」。新生銀の工藤英之社長は同日の記者会見でSBIの提案に疑問を投げかけた。

SBIはTOB後に証券分野や個人向け融資などで連携し、商品の相互供給を行うことなどで、新生銀の企業価値を向上させられると説明している。競合するマネックス証券と新生銀との業務提携よりも、顧客基盤の規模などから「(新生銀の)顧客、株主にとってメリットがあることは明らか」と力説する。

一方、新生銀はこれまでSBIの提案はマネックス証券との提携効果を上回るものにならないと指摘。魅力のない商品は売れないとの例えから「『南極で氷を売る』ようなことにならないか」と実効性を疑問視してきた。

新生銀に投入された約3500億円の公的資金の返済も焦点だ。国が新生銀株を売却して公的資金を回収するには、株価(21日の終値1916円)を約7450円まで引き上げる必要がある。株価が低迷し、返済のめどがつけられない新生銀にとっては〝急所〟だ。

SBIは、大手銀で唯一続く新生銀の公的資金受け入れを「社会的課題」と批判。SBIグループ各社が提携する法人・企業も活用し、収益力を上げることで返済に向けた現実的な道筋をつけると表明する。

これに対し、新生銀は公的資金返済に必要な「相応の資本的余裕」は既に持っていると主張。株価引き上げを通じて返済しなければならない状況の難しさをにじませつつ、返済の具体的方法を質問する形でSBIに反発している。

また、新生銀はTOB後の企業統治(ガバナンス)体制について、SBIが新生銀を思い通りに使う「機関銀行化」を懸念。これについてSBIは、連結子会社化した新生銀で過半数の取締役を社外取締役にし、SBIとの取引を独立した特別委員会が審査する仕組みを導入することで懸念を払拭すると反論している。

買収防衛策を諮る臨時株主総会を見据えて情報発信に力を入れる新生銀だが、21日に発表した株価を上げる対案に新味はなかった。

「事実上のゼロ回答。株主から広く支持を取り付けるのは難しい」(金融関係者)との指摘もあり、買収防衛策の導入をめぐる株主総会では苦戦が見込まれる。

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