手話で「変異株」は…衆院選向けに時事用語続々

「変異株」の標準手話
「変異株」の標準手話

ついに公示された衆院選(31日投開票)の政見放送などに向け、全国手話研修センター日本手話研究所(京都市)は、これまで手話が存在しなかった70語の標準手話を定めた。新型コロナウイルスの「変異株」や「サプライチェーン(供給網)」、「中国包囲網」といった時事用語が手話で表現できるようになった。

耳の聞こえない聴覚障害者にとって、手話は単なるコミュニケーションの手段ではなく、頭の中で物事を考える際に使う第一言語。方言のように地域によって異なる表現や、若い世代にだけ使われるものもある。同研究所は厚生労働省の委託を受け、地域や年代にかかわらず伝わる全国共通の標準手話の確定と普及に取り組んでいる。

新しく使われるようになった言葉に対応するため、毎年約200語の標準手話を制定している。既存の手話を組み合わせてアレンジする場合もあれば、まったく新しい表現をつくることもあるという。

国政選挙前になると、全日本ろうあ連盟などが、その時点でよく使われている時事用語を吟味し、手話の創作を求める単語のリストを同研究所に提出。これを受けて同研究所が標準手話をつくるが、突然衆院が解散されたケースでは「2週間ほどでつくったこともある」(担当者)。近年はカタカナ用語が増え「意味を的確に捉えて翻訳するのが大変」という。

今回定めた70語のうち、とりわけ苦心したのは新型コロナの「変異株」の表現だったという。ウイルスが「変異する」という表現には既に「世の中が動く・変わる」という意味の手話を当てていたが、「株」に該当する手話がなく、新たに指先を上に両手をそろえてから、右手を斜め前に出す表現を考案した。野菜の苗などの「株分け」の意味でも使えるという。

また、製品の材料の調達から消費までの一連の流れを指す「サプライチェーン」は「供給+鎖」、「中国包囲網」は「中国+防止+ネットワーク」と、それぞれ既存の手話の組み合わせで表現。「水際対策」や「選択的夫婦別姓」といった手話も定めた。詳細は同研究所の「新しい手話の動画サイト」。

「新しい手話の動画サイト」はこちらから

(藤井沙織)