点滴連続死公判詳報

(上)戻れるなら「看護師、辞めるべきだった」

久保木愛弓被告
久保木愛弓被告

《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、高齢の入院患者が点滴の投与直後に容体が急変し、相次いで亡くなった事件。点滴袋に消毒液を混入し患者3人を中毒死させたとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の裁判員裁判の公判が20日、横浜地裁(家令(かれい)和典裁判長)で開かれた》

《この日はまず、被告を鑑定した犯罪心理学者への証人尋問が行われた。これまでの公判で久保木被告は、終末期患者が多いことから「自分の勤務中に患者が死亡した場合、患者の家族から責められるのではないか」と、不安を募らせるようになったことを犯行の動機に挙げている》

《犯罪心理学者は計11回、被告と面談するなどした。知能検査の結果、複数の項目で平均に及ばなかったといい、患者への対応を臨機応変に行うことが困難で「看護師という仕事の適性に関しては、厳しいものがあると考える」などと証言した》

《その後、被告人質問が行われた。まず弁護側が、犯罪心理学者らの話を聞き、どう感じたかを尋ねた》

久保木被告「不安や困難を感じたとき、患者を殺すという誤ったことをしてしまって、申し訳ないと思っています」

弁護人「遺族に対しては、どう思うか」

久保木被告「誠に申し訳ないことをしたと思っています」

弁護人「意見や気持ちに変化はないか」

久保木被告「してはいけないことをしてしまったという気持ちに変わりはありません」

弁護人「もし、戻れるとしたら、いつに戻りたいか」

久保木被告「大口病院に入る前です」

弁護人「どうするべきだったか」

久保木被告「看護師を辞めるべきでした」

《弁護側の質問はここで終了。続いて、検察側が被告に質問を投げかける》

検察官「看護師を辞めるという選択肢もあった」

久保木被告「(看護師を辞めることが)まったく頭になかったわけではありませんでしたが、その後の生活のことなどを考えると、決断できませんでした」

《看護師を辞めた後、どんな仕事をして生きていけばいいかわからなかったなどと、久保木被告は説明した》

《久保木被告は公判中、高校時代の実習の経験から『高齢者は人生の先輩で、尊敬している』とも語っている。検察側は、この点についても質問した》

検察官「高齢者に対する尊敬の念などは、看護師になってからも同じだったのか」

久保木被告「記憶がはっきりしません」

検察官「患者と接する中で、やりがいを感じたことはあるか」

《質問に対し、久保木被告は数秒間の沈黙の後にこう答えた》

久保木被告「思い出せません」

《検察側は、旧大口病院に勤務する以前、被告が別の病院でリハビリを担当していたころはどうだったかと尋ねた》

久保木被告「リハビリだと、患者さんが元気で退院していく姿を見ると、やりがいを感じることはありました」

検察官「大口病院ではどうだったのか」

久保木被告「記憶にありません」

《検察側の質問もここで終了。この後、遺族の代理人弁護士が被告に対して質問を始めた》

=(下)に続く