赤の広場で

平和賞の背後の懸念

ノーベル賞委員会が、今年の平和賞をロシアのリベラル紙「ノーバヤ・ガゼータ」のムラトフ編集長らジャーナリスト2人に授与すると発表した。プーチン政権の強権体質を批判し続け「ロシア言論最後のとりで」とも呼ばれる同紙を率いるムラトフ氏の受賞は、ロシアにとどまらず、強権体制と戦う世界のメディアを勇気付けたはずだ。

ただ、露国内では「なぜ平和賞は(収監中の反体制派指導者)ナワリヌイ氏ではないのか」と不満も出ている。ムラトフ氏も「ナワリヌイ氏に受賞させたい」と述べた。確かにプーチン政権があらゆる手段を使って「抹殺」しようとしてきたナワリヌイ氏に授与した方が、メッセージとしてはより明確になったはずだ。

委員会は、ナワリヌイ氏に授与した場合、ただでさえ過酷な状況下にいる同氏の命の危険がさらに高まると考えたのかもしれない。ナワリヌイ氏への弾圧を批判してきたムラトフ氏に授与することで、ナワリヌイ氏を守りつつ露政権を指弾する-という方法を選んだのだと思う。

ムラトフ氏への平和賞授与は喜ばしいが、懸念もある。政権が自国記者への授与を欧米側による内政干渉だとみなし、国内統制をさらに強める口実にしないかということだ。今後の露政権の動きを注視していきたい。

(小野田雄一)