【ソウル=時吉達也】北朝鮮が19日に発射実験を行った潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は従来と比べて小型化された新型で、韓国や在日米軍を主な標的に設定されたとみられる。9月以降5度にわたるミサイル発射実験では、日韓を狙った比較的短距離の戦術兵器が次々と登場したが、専門家らは来年2月の北京冬季五輪などを挟み来春以降、北朝鮮が挑発レベルを高め、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験などに踏み切る可能性を指摘している。
金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は今年1月の党大会で、今後5年間の核ミサイルの開発目標を発表。9月以降の実験では「最も重大な事業」(朝鮮中央通信)とも評される「極超音速(音速の5倍以上)」ミサイルや変則軌道の短距離弾道ミサイルなど、正恩氏の言及に沿った兵器の存在を誇示してきた。
同様に正恩氏が開発加速を指示していたSLBMについては、米本土を脅かし米国の反発が強まるリスクから、発射が来年以降に先送りされるとの見方もあった。北朝鮮は今回、小型化された新型を発射することで、米国への刺激を抑制した形だ。
今月11日に北朝鮮で開幕した兵器展示会では、迎撃回避装置が弾頭に取り付けられた新型ミサイルも公開され、発射実験は今後も続く可能性がある。
これに対し、年末以降は北京五輪もあり、北朝鮮が発射実験を自重し、一時的に対話路線にかじを切るとの観測も浮上している。韓国国防相補佐官を務めた経済社会研究院の申範澈(シンボムチョル)外交安保センター長は、来年3月の韓国大統領選に言及。「対北融和路線の韓国与党を助ける意味もあり、五輪期間中の北京での南北首脳会談に北朝鮮が応じることも十分に予想される」とみる。
ただ、米本土全域を射程に収めるICBMの能力向上や多弾頭ミサイルの開発は5カ年計画に明示されている以上、北朝鮮がタイミングを見極めつつ発射実験を強行する可能性が極めて高い。「五輪後、来年春以降は現在の水準を超える挑発がいつ行われてもおかしくない」(申氏)状況にある。