北、SLBM開発推進 バイデン政権「容認」見極めか

展示されたICBMの前で幹部らと話す金正恩朝鮮労働党総書記(左から5人目)=11日、平壌(朝鮮中央通信=共同)
展示されたICBMの前で幹部らと話す金正恩朝鮮労働党総書記(左から5人目)=11日、平壌(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮が19日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられるミサイルの発射を強行した。北朝鮮が水中からの米軍への奇襲攻撃を念頭にSLBM開発を進めてきたことは明らかだ。バイデン米政権の怒りを買う〝レッドライン(越えてはならない一線)〟を見極めつつ、米側の出方を探る狙いもありそうだ。

「無敵の軍事力を保有し、強化していくことはわが党の最重大政策で目標だ」。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は11日に平壌で開幕した新兵器展覧会で演説し、こう強調した。米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)などが展示され、党の5カ年計画に沿って展示した最新兵器の実戦配備を一つ一つ実現させる意思を内外に示した形だ。

北朝鮮が軍事パレードなどで公開してきたSLBMとは異なる小型のSLBMが展示されたのも目を引いた。2015年以降、SLBMの発射実験を複数回発表しながら、潜水艦からの発射が公表されたことはなかった。潜水艦に搭載するために課題とみられてきた小型化の「成功」を誇示する狙いがうかがわれる。

韓国は9月にSLBMの発射実験の成功を発表しており、韓国への対抗意識も背景にありそうだ。

米韓は最近、北朝鮮が韓国との通信回線を復旧させるなど対話姿勢を示唆したこともあり、北朝鮮との対話再開に向けて頻繁に協議を重ねている。19日には日米韓の情報当局トップがソウルで会合。米ワシントンでは現地時間19日に北朝鮮問題を担当する日米韓の外交当局高官が協議する。

米国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表は18日、ワシントンで韓国高官と会談後、記者団に「われわれは北朝鮮に敵対的な意図を抱いていない」とし、前提条件なしで会う用意があると改めて表明した。米インド太平洋軍司令部も北朝鮮のミサイル発射を糾弾しつつ、「米国や同盟国の人命や領土を即刻、脅かすものではない」と指摘した。

北朝鮮が19年にSLBMを発射した際、当時のトランプ米大統領は「様子を見てみよう。彼らは対話をしたがっている」と述べ、問題視しない立場を示した。

今回の発射は、米側のレッドラインとみなされるICBMではなく、飛距離は約600キロだった。バイデン政権は北朝鮮との対話再開を優先させる立場を示しており、北朝鮮が短距離なら米側が問題視することはないと踏み、新兵器開発を一層加速させる可能性は否定できない。