ハイチで進むギャング支配 身代金目的の誘拐急増

ギャングメンバーに誘拐された被害者の友人らが抗議活動を行う中、反政府スローガンを叫ぶ女性=9月、ハイチ・ポルトープランス(AP)
ギャングメンバーに誘拐された被害者の友人らが抗議活動を行う中、反政府スローガンを叫ぶ女性=9月、ハイチ・ポルトープランス(AP)

モイーズ大統領が7月に暗殺されたカリブ海の島国ハイチで政情不安に伴う治安の悪化が深刻になっている。首都ポルトープランスでは16日に米支援団体のキリスト教宣教師ら17人が誘拐され、17日にはアンリ首相の式典出席中に発砲事件が起きた。いずれの事件でもギャングの関与が疑われており、首都の半分がギャングの支配下に入ったとの見方もある。

米メディアによると、7月の大統領暗殺事件と8月に2200人超の死者を出した地震の後に警察力の低下が顕著となった。ギャングの活動領域が拡大し、首都にも深く浸透してきた。

「西半球の最貧国」とされるほどに経済状況が悪い中、急増しているのが身代金目的の誘拐だ。9月末までにハイチ全土で外国人29人を含む628人が拉致された。人権団体によると、報復を恐れて届け出ないケースもあり、実際の被害件数はさらに多いという。

16日のポルトープランスでの誘拐事件では、キリスト教系の米支援団体が孤児院を訪問した帰途に標的となり、子供を含む米国人16人とカナダ人1人が連れ去られた。関与が疑われるギャング「400マオゾ」は今年4月にも別の支援団体の7人を誘拐したほか、ギャング間の抗争や警官の拉致などでも恐れられている。

17日の発砲事件は、フランスからの独立を1804年に宣言した「建国の父」ジャン=ジャック・デサリーヌの命日に合わせた式典中に発生した。アンリ首相が献花しようとした際に発砲があり、式典は取りやめになった。この数年、首都近郊で試みられたモイーズ氏による献花もギャングの発砲で中止されており、今年は首都中心部に会場を移していた。

モイーズ氏の暗殺事件は未解決。アンリ氏自身が関与を疑われるなど政治の混乱が続き、11月に予定されていた大統領選は無期限延期となった。安定を求め、周辺国への移住を目指す国民が増えているという。(ニューヨーク 平田雄介)