酒の蔵探訪

太冠酒造(山梨県南アルプス市) 山梨の水とコメにこだわり

太冠酒造5代目の大澤慶暢社長=山梨県南アルプス市(平尾孝撮影)
太冠酒造5代目の大澤慶暢社長=山梨県南アルプス市(平尾孝撮影)

山梨の水、山梨の米にこだわる太冠(たいかん)酒造は、伝統的な日本酒造りにおいて全国新酒鑑評会で連続入賞を果たすなど、味には定評がある本格的な酒造会社だ。その一方、ワイン酵母を使ったスパークリング日本酒など柔軟な発想で新感覚の日本酒を生み出す面も持っている。

もともとは甲府市にあった130年以上の歴史のある酒造会社だ。渓谷美に加え、水がきれいで、名水にも選ばれる昇仙峡の水を使っていた。しかし、甲府市中心部にあったことから、13年前、酒造りによりよい環境を求めて、南アルプス山脈の麓にある今の場所に酒蔵を移転し、南アルプスの水で仕込むようになった。

ほぼ同時期に、酒米の山田錦を山梨で作ることのチャレンジを始めた。甲府市と南アルプス市に隣接する昭和町で、休耕田や耕作放棄地での稲作をスタートさせると、昭和町自体や地域の小学校と連携し大きく展開。食育の一環として、田植えや収穫を地元の小学生や幼稚園児と一緒に取り組んでいる。

5代目の大澤慶暢(よしのぶ)社長は「日本酒は食中酒で、食事を盛り上げる裏方。お酒もおいしく、食べ物もおいしくあるべきだ」と、酒造りのこだわりを表現する。そのため、全国的には人気がある日本酒の甘口の傾向ではなく「辛口。すっきりだが、水っぽくなく、パンチがあって、うまみがある」酒質の日本酒を、造り続ける決意だ。

特に、商品ごとの食事との相性を重視しており「うちの純米吟醸なら、マグロのカルパッチョ、純米ならてんぷらなどの揚げ物、本醸造は中華料理に合う」との相性を詳しく解説する。

一方で、新たなジャンルにも挑戦している。最近の日本酒では発泡タイプが流行している。山梨のほかの酒造会社も取り組むなど、新しい日本酒のトレンドだ。酵母を使って瓶内で2次発酵させるのだが、多くの発泡日本酒が日本酒酵母を使っているのに対し、太冠酒造はワイン酵母を使っている。

実は同社では、ワイン酵母を使った発泡タイプの日本酒造りを25~26年前に取り組んでいた。しかし当時は発泡タイプの日本酒市場が全く振るわず、今回のブームに合わせて再開させた。

大澤社長は「前の時は時代を先取りしすぎた」と振り返る。今回は「白ワインの風味も味わえる独特な味で、すっきり飲める」と自信を見せている。