ついに来た。新型コロナウイルスが感染拡大してから初めての総選挙である。
実質、日本の首相を決める先日の自民党総裁選で、多くの人に一票はなかった。思いのたけをぶつけたかった人もいたはずだ。
コロナは世界を変えた。街の見た目は変わらずとも流れる空気、暮らす人の気持ちは元のままではない。私たちは変化後の世界に立脚し、次代を託す人を選ばなければならない。
「自公か、共産党を含む野党共闘か」はもちろん、「どれだけ次代を具体的に描けるか」が有権者の判断材料になろう。
関西の景気はインバウンド(訪日外国人客)に依拠する割合が高かった。大阪の繁華街、道頓堀には大きなキャリーケースを引く海外客が列をなし、平成29年の前回総選挙は、にぎわいの真っ最中だった。コロナでインバウンドは壊滅し、今、跡形もない。
景気回復の起爆剤として期待されているのが、令和7年の大阪・関西万博だ。「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは漠とした印象だったが、コロナを経験し、タイムリーなものとなった。
ただ、「昭和の経済成長再び」とばかりの懐古主義は受け入れられないだろう。有権者はコロナの荒波を経験し、夢物語の真贋(しんがん)を見る目を持っている。
どのように経済を立て直すのか、景気回復とコロナ対策の両立の最適解は何か。現金給付などの公約に目が行きがちだが、各党・候補者がどれだけ次代を見据えた大局的で現実的な視点を発信できるのか、見極めたい。
変化が激しい中でも、ぶれてはいけないのは「日本を守る」姿勢だ。
コロナの間も、中国は強硬な姿勢を維持するどころかさらに強めてきた。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺では中国船が領海侵入を繰り返し、台湾の防空識別圏にも中国軍機が多数飛来している。北朝鮮のミサイル発射も止まらない。
アジア太平洋における現実の脅威を前に、日本が自国の安全を保障する姿勢を揺るがさないことが改めて重要になる。外交安保の方向性はぜひとも判断材料としたい。
想定外のコロナに対し、私たちはなすすべがなかった。総選挙では私たち自身の力を行使できる。外出自粛で時間があった中、改めて自身や世の中について考えた人は多かったはずだ。次代をつくる、熟考の一票を投じたい。(大阪編集長 小川記代子)