野党共闘が進んだ今回衆院選では289の選挙区のうち、立憲民主、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の5野党が213選挙区で候補者を一本化。うち210区で与党と5野党の統一候補同士が対決する。一方で、さまざまな思惑から野党共闘が成り立たず、乱立する選挙区もある。
京都5区は旧民進系2人と共産が立候補
京都5区(舞鶴市など)には、立民前職の山本和嘉子氏(53)、共産新人の山内健氏(53)、無所属前職の井上一徳氏(59)、自民前職の本田太郎氏(47)が立候補。無所属の井上氏は、特別顧問を務める国民民主党京都府連からの推薦を受けており、自共対決に旧民進系の争いとなった。政党対決色が強まる背景には、野党共闘の難しい京都ならではの現実も見える。
「自分の国は自分で守る。こうした課題に精いっぱい取り組みたい」。本田氏は舞鶴市で第一声を上げた。12期務めた谷垣禎一氏の後任として初当選した前回選挙では、5人が乱立するなか、得票率は43・29%。自民党籍を持ち、無所属で立候補した候補の得票を合わせると、保守系の獲得票は65・33%にのぼった。
圧倒的な保守地盤だが、野党からは積極的な共闘の姿勢はみられない。背景には7期28年にわたる革新府政という過去から、大型選挙の多くが共産対非共産で戦われてきたという京都特有の政治史がある。
実際、立民府連は共産府委員会からの共闘の申し入れも「これまで非自民・非共産の立場で支持を受けてきた」と申し入れを拒否した。
立民の山本氏の陣営関係者は、「ここにきて共闘を持ち出すと、地元党員や支持者らの反感を買う。今後のこともある」と話す。さらに、前回希望の党公認で比例復活した井上氏を国民民主の府連が推薦するなど旧民進系も一枚岩とはならなかった。
ある野党の陣営関係者はこうした〝野党乱立〟の状況に「ただでさえ少ないパイを取り合うことになる。与党を利するだけだとはわかっているが…」とつぶやいた。
滋賀3区も一転乱立
「自共一騎打ち」とみられた滋賀3区(草津市、守山市など)では、野党共闘に合意したはずのれいわが不祥事で立民を除籍された前職を擁立したうえに維新も新人を公認。一転、野党が乱立する選挙区となった。
同区にはれいわ前職の高井崇志氏(52)、共産新人の佐藤耕平氏(39)、自民前職の武村展英氏(49)、維新新人の直山仁氏(49)の4人が立候補を届け出た。
佐藤氏は午前9時半ごろ、JR南草津駅前で第一声。「野党統一候補の佐藤です」とアピールし、「このままの政治でいいのか。なんとか政治を変えたいという皆さんの一票を託してほしい」と呼び掛けた。
前回まで岡山1区で比例復活により3選してきた高井氏は午前10時ごろ、JR守山駅前で第一声。議員立法に携わった実績を強調しつつ、「消費税廃止と積極財政でデフレを脱却し、給料を上げる。野党を生まれ変わらせるのは山本太郎代表だ」と訴えた。
直山氏は外資系情報通信会社の現役社員。維新は令和元年の参院選で、候補者を立てずに3区内で約2万3千票の比例票を得た。維新の本拠地である大阪での実績を引き合いに、都市部に通う有権者へ教育無償化の実現などを主張する。
迎え撃つ武村氏は自民県連会長で4選を目指す。選挙の度に得票数を伸ばしており、過去2回の選挙では野党候補に比例復活を許さず勝利した。陣営は野党候補の乱立に「野党が票を食い合うだけだ」と冷ややかに指摘する。