「盛り土」に停止命令一時検討 10年前、静岡県と熱海市「違法に近い」「緊急の是正必要」言及も実現せず

静岡県熱海市で発生した大規模土石流の起点
静岡県熱海市で発生した大規模土石流の起点

静岡県熱海市で7月、死者26人、行方不明1人の被害を引き起こした大規模土石流で、被害を甚大化させたとされる起点の盛り土をめぐり、県と熱海市が10年前の平成23年3月、事業者側に、県条例に基づき工事停止を命じる「停止命令」などの発出を検討していたことが18日、分かった。同日、県が当時の公文書をホームページ上に公表した。だがその後、命令は出されておらず、県と市は同日午後にそれぞれ開催する記者会見で、一連の行政対応の調査結果についてこれら文書に基づき説明する。

命令は「県土採取等規制条例」に規定。工事に伴う土砂の崩壊や流出などの災害発生を防止する「緊急の必要」があると県側が認めるときは、業者に停止を命じることができるとする。

23年3月、県と熱海市の関係部局が集まった際の記録文書によると、この盛り土について「計画通りの施工がされないまま中断状態である上、違法に近い行為が行われている」として対応を協議。18年に土地を購入し19年に市へ盛り土造成計画を届け出たのち、土に産業廃棄物を混入させるなど法令違反を繰り返していた神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)に対し、「条例に基づく停止(中止)命令を考えている」と記されていた。

土石流後の県の発表によると、盛り土はこの直前の23年1月末時点で、高さが少なくとも35メートルと、市に提出された計画(15メートル)の2倍以上に達していた。

協議では、産廃混入などへの行政指導を行っている最中に土砂搬入が行われるなど「指導を行っても是正される様子はない」として、命令に移る段階にあるとの認識が示された。「土砂の流出、崩落等の危険性があるため、緊急の是正を行わせる必要がある」「行政代執行を行う覚悟も必要ではないか」との発言もあった。条例は「非常に弱い効力しか持たない」とし、関係する他法令での処分も議題にあがった。

一方で、この土地は所有権が協議直前の23年2月、現在の所有者である別の個人に移っており、県と市は「問題が複雑になっている」と苦慮していた様子もみられる。

他方、25年1月付の別の公開文書によると、現所有者が県側に提出した文書で、現場の工事が「放置状態」にあるとし、現所有者として「問題案件処理に善意を持って解決する覚悟」と記載。工事計画概要として「土砂崩壊による二次災害防止の安全工事を施工する」と明記されていた。

土石流は今年7月3日に発生。長雨のなか、盛り土を含む約5万6千立方メートルの土砂が流出し、家屋を押し流して約2キロ下の伊豆山港まで到達した。これまでに26人の死亡が確認され、1人が行方不明となっている。

遺族は、不適切な盛り土をしたとして土地の現旧所有者を刑事告訴。また、被災者ら70人が計約32億円の損害賠償を求める民事裁判を起こしている。

県が18日にホームページに公開した関連の公文書は約870点(計約4300ページ)。指導が適切だったかどうかは今後、弁護士などの第三者が評価する。