我流~社会部発

拉致啓発決議反対に透ける詭弁

大阪府議会での決議案採決時に大半の議員が起立して賛成する中、着席のまま反対する共産府議2人。立憲民主党会派の民主ネットの府議2人は棄権し、手前の2席は空席となった=10月11日、府議会議場(鳥越瑞絵撮影)
大阪府議会での決議案採決時に大半の議員が起立して賛成する中、着席のまま反対する共産府議2人。立憲民主党会派の民主ネットの府議2人は棄権し、手前の2席は空席となった=10月11日、府議会議場(鳥越瑞絵撮影)

奇妙な光景だった。11日、大阪府議会の議場。本会議で北朝鮮による拉致問題の啓発活動を推進する決議について採決した際、議長を除く府議83人のうち、79人が起立して賛成する一方、立憲民主党の府議2人は退席して棄権し、共産党府議2人は着席したまま「反対」の意思を示した。

「奇妙」と書いたのは、反対する理由がいまひとつよく分からないためだ。

共産の内海(うちうみ)公仁府議は本紙の取材に「学校現場に対する事実上の強制みたいな話になりかねない」と説明するが、13日の大阪市議会本会議では共産も含む全会一致で決議は採択された。本来「一枚岩」のはずの共産の対応が府議会と市議会で分裂し、ますますよく分からない。

もともと決議案は、超党派の地方議員でつくる「北朝鮮拉致問題の解決を促進する大阪地方議員連絡会」(大阪拉致議連)が作成した。決議文の文言は議連メンバーが提出前に調整しており、議連に参加する共産の山中智子市議は「決議による教育介入の危険性は限りなく取り除かれている」と指摘する。

決議文は府議会のホームページで公開されているので、ぜひ読んでいただきたいが、府議会として啓発活動を推進するとの決意表明に過ぎない。

拉致被害者の横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=を題材にしたドキュメンタリーアニメ「めぐみ」の上映や、政府主催の北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクールへの参加などは、あくまで啓発活動の一例であって、学校側に強制する趣旨でないことは明らかだ。

内海氏は本紙の取材に「命題が何であれ、教育現場に押し付けることは絶対にやったらあかん。今回はそういう中身。教育は現場の独自性を貫く姿勢が大事だ」とも述べた。

左右いずれの政治的立場であろうと、特定の価値観を押し付ける教育は確かに問題だ。共産に代表される左派政党が教育、特に歴史教育で中立的とは思わないが、偏向教育を問題視する点は記者も同感である。しかし拉致問題は北朝鮮による国家主権の侵害であり、人権侵害であることは論をまたない。

決議採択と同時期に、立憲民主党の生方(うぶかた)幸夫前衆院議員が拉致被害者をめぐり「生きている人はいない」などの見解を示したことがクローズアップされた。

こうした拉致問題を軽視したような発言や共産府議団の態度からうかがえるのは、拉致被害者の奪還に本気で取り組む姿勢の欠如だろう。教育現場への強制、介入を理由とする拉致啓発決議への反対理由も詭弁(きべん)というほかない。19日に公示される衆院選は、拉致問題に対する各政党、政治家の姿勢が問われる機会にもなる。

(社会部 清宮真一)