主張

国際法人課税 税逃れ封じる意義大きい

多国籍企業の不正な課税逃れなどを封じる新たな国際法人課税の合意が成立した。世界展開する巨大なIT企業などに対し、国際的に過度な節税を防ぐ仕組みを構築する意義は極めて大きい。

日本を含む136カ国・地域による最終合意である。今後は各国・地域で条約や法律の法整備を進め、2023年からの課税を目指す。多国籍企業などにも適正な税負担を促し、社会的な責任を果たしてもらう必要がある。

世界的なコロナ禍でも巨大なIT企業などは、高い利益を稼ぎ出している。とくに最近は格差是正を求める声が世界的に強まっており、今回の国際ルールを格差是正の取り組みにも生かしたい。

新たなルールは2つある。まずは多国籍企業が稼いだ利益の一部について、そのサービスの利用者がいる国・地域で課税できるようにした。これまでは工場などの拠点がなければ課税できない仕組みだったが、これを改めて、市場国に課税自主権を認める。

もう1つは、国際的に事業展開する企業に対し、世界共通で15%の最低税率を設けることだ。合意には低税率国のアイルランドやハンガリーも参加した。一部のアフリカ諸国は見送ったが、引き続き参加を促し、法人課税の国際的な枠組みを強化したい。

課題もある。合意成立を優先して課税対象に多くの条件を設けたため、当面、新ルールが適用されるのは世界で100社程度にとどまることだ。それでも経済協力開発機構(OECD)の試算では、最低税率導入に伴う税収増は世界で約16・5兆円にのぼる。これを第一歩とし、多国籍企業への適正課税を広げなくてはならない。

法人税率を低くすることで海外企業の誘致を進めてきた新興国もある。そこに配慮し、従業員などへの支払い給与などは一部を課税対象から控除することも認めた。タックスヘイブン(租税回避地)を含め、抜け道ができないようにする国際的な監視も必要だ。

合意にはグーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を抱える米国も参加した。これによって巨大IT企業に独自課税する動きを見せていた欧州の一部も課税を見送るため、国際紛争の回避にもつながる。

実際の課税は各国で法律が整備されてからとなる。ルールの具体化に向けて作業を急ぎたい。

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