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旬を迎える唯一無二の香り 高知県北川村の「ユズ」

爽やかな香りが漂うユズ畑。「収穫は手作業で大変だけれど1年の成果が見られるので楽しい」と話す、田所正弥さん=高知県北川村
爽やかな香りが漂うユズ畑。「収穫は手作業で大変だけれど1年の成果が見られるので楽しい」と話す、田所正弥さん=高知県北川村

料理の味と香りを品よく引き立てる「ユズ」。近年は海外の星付きレストランのシェフやパティシエも競うように使っている。国内生産量の約半分を占める高知県では実が黄色く色づき始め、収穫シーズンを迎えている。(榊聡美)

年末まで続く収穫

国内有数のユズの産地、高知県東部の北川村。野にも山にもユズ畑が広がり、青い実がだんだん色づいて来月には、村全体が黄色に染まる。

「これから12月まで休みなく収穫作業に追われます。でも、この爽やかな香りに癒やされて、忙しくてもストレスを感じることはないんですよ」

生産者の田所正弥さん(61)は、こう話しながら穏やかにほほ笑む。

昨年は豊作で生産量は約130万トンにのぼったが、今年は少なめとか。果樹は実が大量になる年(表年)と、少ない年(裏年)が交互に現れる「隔年結果」がある。実をたくさんつけた枝には次の年に花芽がつきにくく、実も少なくなってしまう現象だ。

田所さんは「裏年で量は控えめでも、香りと風味の良さには自信があります」と胸を張る。

北川村産のユズは9年前、日本で初めてEU(欧州連合)へ輸出され、脚光を浴びた。「国内の比ではないほど厳しい」検疫条件や農薬基準などをクリアして、出荷を続けている。

欧州でも「YUZU」

田所さんもフランスなどへ足を運び、「初めはレモンと間違えられた。でも3、4年たったらそのまま『YUZU』と呼ばれて浸透していた」。レストランでユズの香りを見事に生かした料理を口にし、意気に感じたという。「ほかのどんな柑橘にもない唯一無二の香り。改めてユズの魅力に気づかされました」

順調に需要を伸ばしたものの、コロナ禍は国内外の出荷量にも響いている。村では生産者の高齢化も深刻だ。田所さんは、多くの人にユズの魅力を知ってもらい、さらには若い担い手が一人でも増えるように、収穫体験が楽しめる拠点づくりに取り組んでいる。

「僕もユズ農家になったのは40歳を過ぎてから。都会の生活に疲れた人には、特にすすめたい。ノウハウは全て教えます。僕が先輩にそうしてもらったように」

ユズ果汁を使って作る、彩り豊かな郷土食「田舎寿司」
ユズ果汁を使って作る、彩り豊かな郷土食「田舎寿司」

産地ならではのユズを使った料理も多彩だ。「田舎寿司」は、ユズ果汁をぜいたくに使った酢飯に、四季折々の食材を具にした郷土の味。やわらかな酸味の後に、ユズの風味が口いっぱいに広がる。

人気観光スポット「モネの庭 マルモッタン」にあるカフェでは、四万十ポークのコロッケにユズ風味のクリームソースを合わせたメニューも。

料理長の片山裕さん(59)は「皮のほのかな苦味、果汁の爽やかな風味をアクセントにしました。ユズはまだまだ和のイメージが強いですが、洋風の味にも幅広く合います」と話す。

「モネの庭 マルモッタン」のカフェで人気の「クロケット・ボンブ」(1600円)。ユズのソースは後を引くおいしさ
「モネの庭 マルモッタン」のカフェで人気の「クロケット・ボンブ」(1600円)。ユズのソースは後を引くおいしさ