「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

矢野阪神、逆転Vの絶対条件とは

阪神優勝の鍵は、ヤクルト・中村悠平捕手の頭脳をいかに混乱させるかにかかっている
阪神優勝の鍵は、ヤクルト・中村悠平捕手の頭脳をいかに混乱させるかにかかっている

決闘ヤクルト2連戦連勝が逆転優勝への一縷の望みでしょう。矢野阪神は絶対2連勝!しかありません。ポイントはヤクルトの〝脳みそ〟を混乱させることだ-という指摘があります。矢野阪神は135試合消化時点で73勝54敗8分け。首位・ヤクルトは133試合消化時点で70勝46敗17分けでゲーム差は2・5。ヤクルトの優勝マジックは6です。ヤクルトが残り10試合を5勝5敗でも阪神が勝率で上回るには8連勝しかありません(すべて15日現在の状況)。もはや絶望的な立場に追い込まれた阪神ですが、19日、20日の直接対決ヤクルト戦(甲子園球場)で連勝することが逆転Vの絶対条件です。どうやって連勝する? 鍵は中村悠平捕手(31)を〝潰す〟ことにある-といいます。

■優勝の可能性は風前の灯

阪神が勝っても、勝っても、ヤクルトはそれ以上に勝ち続けている…ということでしょう。阪神は10月に入ってから8勝3敗1分け(14日終了時点)です。12日からの敵地・東京ドームでの巨人3連戦も懸命に勝利に向けて戦いました。14日の3戦目は九回2死から板山、木浪の連続タイムリーで3点をもぎ取り、勝ち切りました。対巨人戦の今季最終試合でしたが、対戦成績は13勝9敗3分け。巨人にシーズンで勝ち越したのは、なんと2007年の岡田彰布監督率いる阪神で14勝9敗1分け。その時以来、実に14年ぶり…だというのです。

巨人を倒すイコール優勝…というわけではありません。実際、07年も阪神は巨人に勝ち越したのに順位は3位。そのシーズンで優勝したのは巨人でした。しかし、巨人に勝ち越す…ということは優勝への最大のライバルを蹴散らす、ということですね。本来?なら巨倒=優勝のイメージを阪神ファンなら長く抱き続けてきたはずです。ところが、今季は開幕前は「眼中になかった?」ヤクルトに逆転を許し、もう優勝の可能性は風前の灯…。

「せっかく巨人がボロボロになったのに、なんでヤクルトが今年に限って強いんや…。矢野さんはツキがないんやろか…。なんだかトンビに油揚げやわ」と知人の熱狂的な阪神ファンは愚痴っていました。

まさにトンビならぬツバメに油揚げでしょうか。

■週明け2戦の連勝が条件

ただ、まだ勝負は下駄を履くまで分からないともいいます。古い話で恐縮ですが、1973(昭和48)年の阪神は現在のヤクルトとほぼ同じ状況にあったといえます。リーグ9連覇を目指した巨人と激しく競り合い、巨人が残り1試合、阪神が残り2試合の時点で阪神は10月20日の中日戦(当時は中日球場)に勝つか、引き分けるかで優勝でした。それが2対4で敗れてしまい、最終戦の巨人戦(甲子園球場)は勝った方が優勝という大一番。10月22日の阪神対巨人戦は0対9の大差で阪神は敗れ、絶対的な優位を生かせませんでした。

当時の主力選手の一人はこう話しました。

「あの時だって、阪神は絶対的に有利だったんだ。数字的には一番、優勝に近かったんだ。それでも負けた。確かに現在の数字上はヤクルトの絶対的な有利。これは誰が見ても明らかだろう。でも、生身の人間がやっている野球、スポーツだから、一寸先は何が起きるかわからないんだ。矢野監督ら阪神の選手たちは数字を見てため息をつくんじゃなくて、目の前の試合を全力で勝ち取ってほしいね」

前回のコラム(「燕にマジック点灯、阪急阪神ホールディングス首脳はチームを解剖・大手術すべき」=10日アップ)では、開幕から絶対的に有利な状況だったのに、どうして失速してしまい、V逸の危機に陥ったのか…その病巣を解剖、手術しなければならないーと書きました。コレはマストで必要だと思います。ただし、解剖も大手術も矢野丸が港に着いて、2021年の航海が終わった後の話になります。まだ逆転優勝への可能性が残されている17日現在の状況では、一縷の望み、一縷の可能性を追い求めるしかありませんよね。

そうした観点から見るなら、週明けの19日、20日に本拠地・甲子園球場で行われるヤクルト2連戦は絶対に2連勝。引き分けすら許されない戦いです。一歩どころか半歩の後退も許されない戦いになります。

阪神の今季の対ヤクルトは12勝8敗3分け。4つ勝ち越しています。しかし、この対戦成績からはあまり優位性を感じません。なぜなら、新型コロナウイルス感染防止策のため、ヤクルトはシーズン開幕からオスナ、サンタナの両新外国人選手が来日できず、チームに合流できませんでした。逆に阪神はルーキー佐藤輝明内野手(22)が開幕から打撃好調でした。現在のチーム事情とは全く違っていました。なので阪神はシーズン開幕3連戦で3連勝するなど、開幕からヤクルトには6連勝を飾っていますね。

それが東京五輪による中断期間のあけた8月13日以降は…。対ヤクルト戦は2勝5敗1分けです。まさに現状のチーム成績を表すかのように、前半戦は阪神の優位、後半戦は逆転…の構図です。当然ながら、戦力事情も激変しました。ヤクルトはオスナとサンタナが機能し、逆に阪神は佐藤輝が大不振。サンズも不振で2軍落ちしています。

では、19日と20日の直接対決はどうする? 実は佐藤輝&サンズがそろって打撃不振に陥った原因こそ、逆に対ヤクルト戦への戦略戦術の重大ポイントだーという指摘があるのです。ある阪神OBはこう指摘しましたね。

■ヤクルト中村捕手を揺さぶれ

「前半のヤクルトと後半のヤクルトでは決定的に違う部分がある。それはヤクルトの中村悠平捕手のリードなんだ。元来、中村は変化球捕手だ。困ったら右打者の外角にスライダー、カット。阪神の各打者、特にサンズはその緩い外角の変化球を狙い打っていた。ところが、五輪明けの中村のリードは大きく変わった。強気に内角に直球を要求するようになり、変化球捕手のイメージが消えた。佐藤輝もサンズもヤクルト戦で打てなくなった理由はそこにある。内角を厳しく強い球で攻められ続け、外角から中に入る甘めの変化球が来なくなった」

つまり変化球主体から内角の強い球主体のリードに変化したヤクルト・中村捕手の〝変身〟が、阪神対ヤクルトの対戦成績を激変させたーという指摘です。

ならば、どうする?

「中村に考えさせないといけない。頭を混乱させるようなチーム打撃が必要だろう。打者全員が直球狙いに切り替え、〝直球を狙っているぞ〟という姿勢を見せることだろう。中村がリードで迷えば、当然ながら投手陣も動揺する。ヤクルトを揺さぶるには、絶対的に中村を崩すことだ」

ヤクルト好調の原因がリーグトップのチーム138本塁打、588得点(15日現在)など強力打線にあることは誰の目から見ても明らかです。そして、見逃せないのがチーム防御率3・33(15日現在)。なんとリーグ2位。昨季のチーム防御率4・61からは大きく改善されています。投手陣を支えているのが中村悠平捕手の〝脳みそ〟であるならば、阪神打線はそこを混乱させなくてはならないわけですね。

泣いても、笑っても阪神の残り試合は「8」(16日現在)です。優勝するためには全勝しかないでしょうね。そんなことムリ…と言うなかれ、希望があるうちは絶対に諦めてはいけませんね。そして、とにかくヤクルトとの決闘は全て勝つ! この一週間、手に汗握る日々となるのでしょうか…。期待してみていきましょう。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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