ザ・インタビュー

筋・骨・腸の健康を守る食事を 料理研究家・村上祥子さん新刊

「健康で生き生きとした生活を送るカギは『食べ力(ぢから)』」と話す村上祥子さん(世界文化社提供)
「健康で生き生きとした生活を送るカギは『食べ力(ぢから)』」と話す村上祥子さん(世界文化社提供)

「人生100年の時代が現実のものとなり、長い老後を自分らしく、そして自己責任で生きていく時代が来たと思うのです」

来年2月に80歳を迎える現役料理研究家。同じシニアだからこそ、自らの実践をふまえて言う。「何が一番問題かというと、体力ですね」。足元がふらつく、腰が痛い、体が冷える…そんな不調を抱える読者も多いのではないだろうか。

シニアの健康には筋肉量を増やすこと、骨量を減らさないこと、そして腸内環境を整え、免疫力を上げることが肝要という。特に筋肉は、食事と適度な運動で80歳からでも増やせるそうだ。ただしそのために必要なタンパク質は、一度に多く摂取しても排泄(はいせつ)されてしまう。「効率よく筋肉を増やすには、1日3回に分けて食べるのがポイントです」

とはいえ年をとるほど、手をかける料理はおっくうになる。でもそこは「電子レンジ調理」の第一人者。本書で紹介するレシピは、自ら考案した8種の〝長生き調味料〟と食材(肉や魚、卵、大豆製品など)を組み合わせて、「電子レンジでチン(レンチン)すれば出来上がり」という簡単なもの。〝長生き調味料〟も特別なものではなく、玉ねぎとにんにくなどを混ぜた「にんたまジャム」やサバ缶を使った「サバそぼろ」など、作り置きの調味料のこと。タンパク質だけでなくカルシウムやビタミン、食物繊維など必要な栄養素をおいしく摂取するための工夫が凝らされている。

「わかりやすい栄養学の本ですね、とも言われます」。管理栄養士として最新情報に触れつつも、「一般の人にどう落とし込むか」に心を砕いてきた。

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「社宅に暮らす主婦」から料理研究家となって半世紀以上。電子レンジ料理は糖尿病患者の栄養指導で思いついたのが始まりだった。電子レンジを使えば〝揚げない唐揚げ〟など、油と摂取カロリーを極力抑えた料理も可能になる。やがて個食の時代になると、一人暮らしの若者や共働きの家庭、シニアにもレンチン調理が広がっていった。

これまで出した著作は500冊以上、累計975万部を超える。かつては地元福岡だけでなく東京にも拠点を構えて料理教室を開き、さらに大学で指導するなど目まぐるしい日々を送っていた。7年前に夫を見送り、今は福岡の自宅兼キッチンスタジオを発信拠点としている。近年、「おひとりさま」のシンプルライフをつづったエッセーなども話題になった。

「私、華奢(きゃしゃ)に見えて実は丈夫なんです。風邪もひかないし、坂を上るのも平気。調べてもらうと、足の筋肉がかなりついているそうです」

1日3度の食事だけでなく、どうやら毎朝日課の「トランポリン」が秘訣(ひけつ)らしい。「ただ飛ぶだけでも体幹は鍛えられる。それに、昔はすぐにタクシーに乗っていたけれど、ふと『これじゃ、待っているのは介護される生活』だと気が付き、バスと徒歩で極力移動するようになった。自分をたたき台にしながら、シニアの方々と情報を共有できればと思っています」

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今月、コロナ感染防止のため休止していた料理教室をようやく再開した。キッチンスタジオなどの空調設備を一新し、万全の対策を取った上で、長年通う受講者らを迎え入れている。

「皆さんにとっても、安心して出かける場所があるというのは大切じゃないかな。一番長い方は40年。もはや料理が目的というより、お仲間と通う、その決まりごとが励みになるのかも。人と接しないとだんだん気持ちが落ちていきますからね」

近い将来の夢は、ランチを提供する「村上食堂」のオープン。既に保健所の認可も取ったが、いかんせん自分自身が忙しすぎる。「『いつ開くんですか』『お総菜だけでも売ってほしい』などと最近よく言われるんですけどね」と苦笑する。

「まあ元気で生きていれば、いつかは開けると思います」

3つのQ

Qリラックス方法は?

美術館で絵画を見たり、能や歌舞伎を鑑賞したりします。でも一番はやはり、仕事ですね

Qよく見るテレビ番組は?

朝5時からのNHKニュースかな。局に関係なく、人間に焦点を当てた番組に面白さを感じます

Q福岡の好きなところは?

人情に厚く、外からやって来た人も垣根なく受け入れるところ。あと、街が程よいサイズでまとまっているところ

むらかみ・さちこ 昭和17年、福岡県生まれ。料理研究家、管理栄養士、福岡女子大学客員教授。福岡女子大学卒。43歳のとき、同大学で栄養指導講座を担当し、糖尿病治療食開発のため電子レンジ調理に注目。料理本など著書は500冊以上。シニアの料理教室や子供の食育授業にも力を入れている。今回の新刊タイトルは「80歳、村上祥子さんの元気の秘訣は超かんたんレンチンごはんだった!」(世界文化社)。