【ゆうゆうLife】生きる力はつながり次第 フレイル防止へサロン「あうねっと」の挑戦 - 産経ニュース

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生きる力はつながり次第 フレイル防止へサロン「あうねっと」の挑戦

「あうねっと」の参加者の平均年齢は83歳。ピンク色のTシャツを着た住民ボランティア「シスターズ」の平均年齢は73歳だ=7月、東京都新宿区(名札を画像修正しました)
「あうねっと」の参加者の平均年齢は83歳。ピンク色のTシャツを着た住民ボランティア「シスターズ」の平均年齢は73歳だ=7月、東京都新宿区(名札を画像修正しました)

新型コロナウイルスの流行で各地で行われていたサロンや茶話会の中止が相次ぎ、高齢者の心身機能の低下が心配されている。いわゆる「コロナフレイル(虚弱)」。コロナ下で人々の交流の機会が減った今、サロン運営者はフレイル防止に知恵を絞っている。その一つ、東京都新宿区のサロン「あうねっと」の取り組みを紹介する。

言葉が出なくなる

東京都新宿区の大規模住宅「戸山ハイツ」に住む矢沢正春さん(66)は、仲間と一緒に高齢者向けサロン「カフェあうねっと」を運営している。

「誰とも話さない日が1週間続くと、言葉が出なくなり、感情もなくなる」「気持ちが沈んで何もかもおっくうになり、家の中のちょっとした用事も先送りになる」

最近は、仲間の話を聞くたびに、新型コロナによる「巣ごもり生活」が心身に及ぼした影響を実感する。

コロナ前には週1回、定期的にサロンを開いていた。団地の一角にある会議室に40人程度のメンバーが集まり、運動をしたり、ゲームをしたりしていた。

緊急事態宣言下ではサロンを休止し、宣言が明けると再開。それを繰り返してきたが、そのたびに参加者の機能低下に直面した。自力で歩いていた人がつえで歩くようになっていたり、階段を上れなくなっていたり。高齢者には、外に出ないこと自体がリスクになる。

東京家政大学の学生も参加。若い人は大人気。右端が矢沢正春さん
東京家政大学の学生も参加。若い人は大人気。右端が矢沢正春さん
電話班を結成

気持ちを引き立てようと、緊急事態宣言下の時期にはお便りを配布。おしゃべり好きのメンバー4、5人は「電話班」を結成し、参加者に電話をかけた。狙いは会話の活性化。表情が分かるといいが、昭和初期の世代はオンラインミーティングというわけにもいかない。もどかしい思いが募った。

電話班には、東京家政大学の松岡洋子准教授(高齢福祉論)のゼミの学生らも参加した。かねて運営に協力しており、東京に3回目の緊急事態宣言が出された時期の電話作戦では、ワクチンの接種予約を話題にした。

高齢者には「印刷物の字が小さくて読めない」「ネットで予約なんてできない」など、予約に数々のハードルがあると聞いていたからだ。

同大3年の中村綾乃さんは、「(率直に)話ができるよう、事前に学生の写真入りのチラシを配布してから電話した。いろいろな話を聞くことができた」と言う。

ワクチンの予約ができずにいた人は地域の支援者につないだ。きちんと予約できていたのは、子供や孫に代行してもらった人たち。つながりがあるかないかで生活していく力に差が出るのは、コロナ禍でも平時でも変わらない。

あうねっと参加者の平均年齢は83歳。支える住民ボランティア「シスターズ」の平均年齢は73歳。ほぼ全員がワクチン接種を終えており、緊急事態宣言が明けるのを待ってサロンを再開すると、約20人が参加した。

「居場所があれば待っている人がいる。あうねっとに行くために前々日から体調を整え、当日はストレスを発散し、終了後の余韻も含めて週3、4日は元気でいられる」(矢沢さん)

減る外出頻度

外出頻度が減ることで高齢者の身体と認知の機能が低下し、要介護のリスクが強まる「フレイル」になることについては、多くの研究がある。

東京大学の高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長らのグループは、東京都内の高齢化率の高い集合住宅で、高齢者294人にコロナ前後の外出頻度と生活の変化について調査を実施した。

それによると、約41%の高齢者の外出頻度が低下。特に外出が週1回以下になった層では、「運動ができない」が5・28倍。食材の確保に影響が出るなどで「食生活が悪くなった」が2・63倍。「会話量が減った」が2・11倍に上った。