米EU、対中露で寄り戻す インド太平洋協議開催へ

【ワシントン=渡辺浩生】ブリンケン米国務長官と欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は14日、ワシントンで会談し、インド太平洋戦略に関するハイレベル協議を年末までに開催することで合意した。米EU関係はアフガニスタン情勢の混乱や米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」発足に伴いギクシャクしたが、中国による台湾挑発やロシア産天然ガスの価格高騰といった米欧共通の課題が融和を促した。

米国務省によれば、ブリンケン長官とボレル上級代表は「共通する課題に協力して取り組む責任」で一致。アフガン情勢で意見を交わし、ロシア、中国に関するハイレベルの対話をそれぞれ年内に開くことに意欲を見せた。

ブリンケン氏はEUのインド太平洋戦略を歓迎するとし、「より強固で能力の高いEUの防衛体制が世界の安全保障に貢献し、北大西洋条約機構(NATO)と両立できる」として米国の支援を確認した。

米EU関係をめぐっては、8月の駐留米軍撤収に伴うアフガン混乱で、現地に軍を駐留した欧州の同盟国から、米国の国内問題を優先させた判断ミスとの批判や不信感が広がった。

また、オーカスに基づき米英が豪州に原子力潜水艦の技術を供与することで、フランスと豪州との潜水艦開発計画が破棄され、フランスが米豪に駐在する大使をそれぞれ一時召還するほど関係が悪化していた。

一方で、中国軍機が台湾の防空識別圏に相次ぎ進入する軍事挑発が激化する中、欧州諸国も米国と同様に自由・民主主義を共有する台湾との交流や関与を強める動きが広がりつつある。

加えて、ロシア産天然ガスの供給抑制が一因と指摘されるエネルギー価格の高騰は、インフレや経済不調を招き、米EU双方の悩ましい問題となった。

ブリンケン氏とボレル氏は、エネルギー問題の閣僚級会議を来年初めに開くことでも一致。安保防衛に特化した協議体創設も模索する。

同盟不信に陥りかけた米欧だが、中露の威圧が修復に向かわせた。自由で開かれたインド太平洋は両者の信頼醸成に格好の舞台となったといえる。

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