都民の消防官横顔

⑤完 装備部航空隊 大山忍消防司令補(56) 飽くなき空への情熱

空から救命救急活動を行う装備部航空隊の大山忍消防司令補=立川市泉町(松崎翼撮影)
空から救命救急活動を行う装備部航空隊の大山忍消防司令補=立川市泉町(松崎翼撮影)

「パイロットになりたい」。小学5年のとき、自衛隊入間基地(埼玉県)で開かれた航空ショーで空を駆けるブルーインパルスに心を奪われた。大学卒業後に自費で渡米し、ヘリと飛行機の免許を取得した後、平成4年、東京消防庁に入庁。災害や山岳救助など数々の現場に赴き、昼夜を問わず活躍を続けてきた。

強く心に残っているのが、平成23年の東日本大震災での救助活動。奥多摩地域で飛行訓練中、急に視界が黄色くなった。「地震で木々が揺れ、花粉が飛び散っていた」。東の方向から火の手が上がっていた。

「大山、行け」。午後5時すぎ、停電で暗闇が広がる中、月明りとGPS(衛星利用測位システム)を頼りに、現地に向かった。「原発、大丈夫ですかね」。東京電力福島第1原発近くを飛行中、上司と交わした会話は今でも覚えている。

地震発生翌日の3月12日、宮城県気仙沼市内での救助活動を命じられた。「まるで映画をみているような感覚だった」。折り重なる車両の山に、立ち上る炎。壊滅した街の光景に言葉を失ったが、開け放たれたドアから流れてきた潮の香りと焼けたすすのにおいで、現実に引き戻された。眼下に見えるのは、助けを求めて必死に手を振る大勢の被災者の姿。一度に多くの人を救助できないもどかしさを感じながらも32人の命を救った。

最も意識しているのが、安全運航。危険な現場は多く、事故が起きないよう気象状況の確認などに心を砕く。「空中での作業は、自然の法則に逆らい、自然の脅威と闘うことになる。危険をコントロールすることで、安全を目指す」と強調する。

総飛行時間は4800時間を超えたが、少年のころに抱いた空への情熱が色あせることはない。「空にいると、景色だけでなく、時間や距離の感覚も変わる。それが魅力」と語る。(松崎翼)

おおやま・しのぶ 神奈川県出身。平成4年、東京消防庁入庁。5年から装備部航空隊の航空操縦士。妻(48)と長男(17)、次男(13)の4人家族。愛犬は柴犬の「まめすけ」。釣りが趣味で、年1回は北海道に足を運び、アメマスやニジマスを釣り上げるのが楽しみの一つ。=おわり