こども庁、不妊治療保険…前政権の目玉政策の行方は

官邸に入る野田聖子氏=4日午後、首相官邸(川口良介撮影)
官邸に入る野田聖子氏=4日午後、首相官邸(川口良介撮影)

「こども庁」の創設や不妊治療への公的医療保険適用-。菅義偉(すが・よしひで)政権の肝いりだった少子化対策の多くは道半ばで、岸田文雄政権に引き継がれた。具体的な中身はいまだ不透明のままで、関係者の間には期待や不安が交錯する。19日に公示される衆院選では、与野党を超えた活発な議論を望む声が高まっている。

「子供目線に立ち、縦割りを排した行政を進めていく思いに何ら変わりはない」。岸田首相は12日の衆参両院の本会議で、こども庁創設に意欲を見せた。同日には、野田聖子こども政策担当相とともに東京都内の「子供食堂」を訪れ、経済的な困難を抱える人の支援者らと意見交換した。

子供の貧困や児童虐待、不登校など子供をめぐる問題は、文部科学省や厚生労働省などに分散し、省庁間の連携不足が原因で、問題が見逃されるケースも少なくない。こども庁には子供関連の業務を一元的に所管する組織として、問題解決を期待する声もある。

縦割り行政の弊害を長年指摘されているのが、幼児教育・保育の分野だ。幼稚園は文科省、保育所は厚労省が所管。幼保一元化を目指しつつも、省庁再編にも直結するため、官僚や族議員らの抵抗感が根強い。

平成18年には幼保の機能を統合した認定こども園を新たに内閣府が担うことになり、より複雑化した。認定こども園の場合、同じ保育内容でも子供により保育料が異なるなど、保護者に分かりづらく不公平感のある状況も生じているという。

東京都と千葉県に認定こども園など計8施設を運営する学校法人の理事長は「補助金申請の提出先にしても担当省庁によって異なり、煩雑だ。こども庁の創設で、制度の単純化が進んでほしい」と期待する。

野党側にも子供政策に一元的に取り組む省庁の創設を求める声はある。立憲民主党も政策集で、「子ども省」の早期設置を打ち出している。

明治大公共政策大学院の田中秀明専任教授は、現段階では「器作りが先行している」と指摘。「本当に子供や保護者のためのサービスや事業が拡充されるのか。利用者にとって複雑で分かりづらい制度であっては意味がない」と訴える。

こども庁創設と並んで菅政権の目玉政策だった不妊治療への保険適用は来年4月の開始の方針が固まったものの、治療法や薬剤の適用範囲などは議論の途上だ。

都内の女性会社員(36)は、基礎体温にあわせ自然妊娠を試みるタイミング法による不妊治療を続ける中で、体外受精を考えるようになった。排卵誘発剤の内服など体外受精の前後の治療や男性不妊を含め、「保険適用の範囲を明確に示してほしい」と話す。

体外受精や顕微授精を経験した奈良県のパート女性(43)は「病院ごとに治療内容や費用が異なり、本当に保険適用が実現するのか」と疑問を口にする。

一方、不妊治療の当事者でつくるNPO法人「Fine(ファイン)」には、「政権が代わったら、立ち消えになるのではないか」といった不安の声が多く寄せられているという。

松本亜樹子理事長は「菅政権で不妊治療に光が当てられたことはありがたく、追い風がやまないようにしてほしい。衆院選でも不妊治療をしっかりと公約に掲げ、当事者の力になってくれる候補者が出てきてもらいたい」と期待を込めた。(小林佳恵、橘川玲奈)

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