美村里江のミゴコロ

涸沢カールの紅葉

中学の林間学校以来だった5月の登山。初心者ながら大変楽しみ、ありがたいことに「山番組」からまたご依頼をいただいた。目的地は北アルプス穂高岳の涸沢(からさわ)カール。その紅葉の魅力に迫る番組である。

目を見張る美しさは番組をごらんいただくとして、道中で面白く体感したことを書きたい。下調べによると、1泊予定の涸沢ヒュッテ(山小屋)は標高約2310メートルに位置する。5月に訪れた東京・奥多摩町の川苔山(かわのりやま)より950メートルも高く、少し酸素も薄い世界。全く想像が及ばなかった。

一つ確実なのは、「山用の体をつくる具体的なトレーニングが必要」という前回の経験。そして登山時間よりも問題は「段差」。登頂、下山時の疲労軽減を今回の目標にした。

自主トレでは非常階段のゆっくり昇降を20分1セットで、最多4セット。お世話になっている運動の先生にもご相談しつつ2、3日おきに3週間ほど続けた。

登山のコツは本やネットの情報を基礎程度にし、残りは現地のプロから直接聞いて身に付けた(「本物風」を装う仕事柄、これが得策と感じている)。

その中で今回最も効果を実感したのが、登山ガイドさんからうかがった「呼吸のコツ」である。歩数を増やし高低差を抑えていても、視線と足運びに意識が集中し、次第に息が上がってくる。その対策として「高山病の予防も含め『しっかり吐く』意識を持つと、酸素が回って楽になりますよ」と教えていただいたのだ。

意識してすぐ、呼吸が落ち着き、汗も引いた。運動量に対して酸素供給量が足りず焦って循環させていた体が、酸素を得て通常稼働に戻った、というのがはっきり感じられ、途端に全身が軽くなった。

ガイドさんと人体の機能に感謝しつつ、順調に登頂。1泊して撮影も終え、同日下山して無事帰京した。

さて、翌日起きると…。左右内外前後、両足が満遍なく軽い筋肉痛だった。局部疲労がなく負担を分配できた意味で、個人的目標としては大金星。階段自主トレをしておいてよかった。2日間堪能して目に焼きついた美しい紅葉を思い返しつつ、平等な疲労感がうれしい爽やかな朝であった。

番組はNHKBSプレミアム「絶景満喫!北アルプス 涸沢カールの紅葉」。放送は10月17日(日)の午後0時から。