拉致、長すぎる膠着 帰国19年…家族ら「成果を」 - 産経ニュース

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拉致、長すぎる膠着 帰国19年…家族ら「成果を」

政府チャーター機のタラップを降りて帰国した拉致被害者の地村保志さん(前列右)、富貴恵さん(同中央)夫婦。(中列右から)蓮池薫さん、祐木子さん夫婦。曽我ひとみさん(後列中央)=2002年10月15日(大井田裕撮影)
政府チャーター機のタラップを降りて帰国した拉致被害者の地村保志さん(前列右)、富貴恵さん(同中央)夫婦。(中列右から)蓮池薫さん、祐木子さん夫婦。曽我ひとみさん(後列中央)=2002年10月15日(大井田裕撮影)

北朝鮮による拉致被害者5人が平成14年に帰国してから15日で19年。5人以外の被害者の帰国は実現しておらず、日朝交渉は停滞し、拉致問題の全容解明にはほど遠い状況だ。最愛の人との再会を待ち続ける家族らは、国政の新たなありようを決める衆院選を控え、次期政権に対し、「成果」を改めて期待している。

「祝意と悔しさが入り交じっていた」。市川修一さん(66)=拉致当時(23)=の兄で、鹿児島県に暮らす健一さん(76)は14年10月15日、羽田空港で政府チャーター機のタラップから下りてくる5人の被害者を、複雑な思いで見つめていた。

前月の日朝首脳会談で、北朝鮮は拉致を認めたものの、何の証拠もないまま修一さんを含む8人を「死亡」と説明。健一さんは無論、生存を信じ、この日の帰還にも淡い期待を寄せていた。「5人とその家族の再会がかなって、本当によかった。あの喜びを、私たちも一刻も早く味わいたい」と声を詰まらせる。

5人の帰国以降、拉致問題に大きな進展はなく、今回の衆院選に際しても議論は低調。拉致被害者をめぐり「生きている人はいない」などとした立憲民主党議員による不適切発言で、存在がクローズアップされるという皮肉ぶりだ。

増元るみ子さん(67)=同(24)=の弟、照明さん(66)は「この長すぎる膠着(こうちゃく)について、国民はもっと怒ってほしいし、その怒りを候補者選択の判断材料にしてほしい」と訴える。

安倍晋三元首相は拉致問題を「最重要課題」に位置付け、岸田文雄現首相もこれを継承。家族会や支援組織「救う会」が求める「全拉致被害者の即時一括帰国」の方針も共有しているが、局面打開への道筋は描けていない。

松木薫さん(68)=同(26)=の姉の斉藤文代さん(76)は昨年、体調を崩して手術を受けた。現在は復調し、住まいのある熊本県内での署名活動にも参加している。この19年を振り返り「『次』があることを信じて生きてきた」。再会への決意に揺るぎはないが、残された時間の少なさも痛感している。

「私たちの世代と、家族が抱き合うことがかなわなければ、国家の恥」。横田めぐみさん(57)=同(13)=の母、早紀江さん(85)は、改めて政府の奮起を促した。

一方、拉致問題担当相を兼任する松野博一官房長官は14日の記者会見で、「全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現へ、ご家族の皆さんに寄り添い、あらゆるチャンスを逃すことなく全力で行動していく」と述べた。松野氏は、5人が帰国して以降、被害者が一人も帰国しない現状を「痛恨の極み」とし、「被害者ご本人もご家族もご高齢となり、一刻の猶予もない」と強調した。