与党、現状維持は困難 野党は統一候補カギ 衆院選

衆院が14日、解散され、与野党各党は19日公示、31日投開票の衆院選に向け事実上の選挙戦をスタートさせた。自民、公明両党の与党が過半数(233議席)を維持し、岸田文雄政権が安定した政権運営を続けることができるか、それとも、多くの選挙区で候補者を一本化し、政権交代を目指す立憲民主党や共産党などの野党がどこまで議席を伸ばせるかが焦点となる。

岸田首相は衆院選の勝敗ラインについて、自民、公明の与党で過半数を獲得することだとしている。解散前の自民の議席数は276だが、「現状維持」は困難視されている。

自民の麻生太郎副総裁は14日、麻生派(志公会)の会合で「これまでの3回は追い風の順風な選挙だった。今回は初めて順風ではない選挙だ」と述べ、引き締めた。

その言葉通り、平成24年衆院選は民主党政権への失望が広がり、野党だった自民による政権奪還に支持が集まった。26年衆院選は当時の安倍晋三首相が消費税率10%への引き上げ延期を表明して電撃的に衆院を解散して自民は圧勝。29年は野党が分裂したこともあって自民が勝利した。

しかし、今回は野党の選挙区調整が進み、全289選挙区のうち210以上で立憲民主党や共産党などが一本化した候補と与党候補が対決する構図となる見通しだ。自民には「276議席獲得は難しい」(中堅)との声が広がっている。

また、新型コロナウイルス対策をめぐる政府・与党への不満を受け、安倍政権、菅義偉政権は支持を落とした。菅氏が退陣して岸田政権が誕生し、内閣支持率は盛り返したものの、「ご祝儀相場」が衆院選の結果につながるとはかぎらない。

自民幹部によると、自民が今月中旬に行った衆院選情勢調査での予想獲得議席は250議席超で、菅政権下の8月調査から劇的には増えなかったという。中には評価を落とした候補もいて、ベテランは「楽な選挙ではない。単独過半数の233議席が取れればいいほうだ。党幹部や閣僚の失言があれば、さらに減る」と危機感を示している。

一方、野党各党は衆院解散に合わせて、衆参両院議員総会などで衆院選必勝に向け気勢を上げた。野党の政党支持率は伸び悩んでいるが、立民や共産などは共闘し、岸田首相の政策主張のぶれを攻撃材料に党勢拡大を図る考えだ。

「1強による傍若無人な政治を終わらせる。そのスタートが今日だ」

立民の枝野幸男代表は党会合でこう宣言し、政権交代を目指すと訴えた。共産の志位和夫委員長も党会合で「自公政権の表紙だけ変えて、安倍元首相、菅前首相の政治が続くことにほかならない」と決意を語った。

立民と共産は市民団体を介した共通政策や限定的な閣外協力に合意した上、多くの選挙区で候補者の一本化を図り、これまでにない共闘態勢で選挙戦に臨む。

ただ、枝野氏らが目指す政権交代のハードルは高い。14日の解散前の時点で立民、共産に国民民主党、社民党、れいわ新選組を加えた野党勢力は132にとどまる。過半数獲得には100以上の上積みが必要となる計算だ。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が9、10両日に実施した合同世論調査でも、政党支持率は自民が45・3%だったのに対し、野党は立民6・4%、共産2・5%、国民0・5%などと低迷した。

支持率6割を超える岸田内閣を相手に政権交代を成し遂げるのは容易ではないが、野党は、金融所得課税見直しの当面撤回など首相に目立つ発言のぶれを選挙戦で追及していく構えだ。国民の玉木雄一郎代表は党会合で「首相が掲げていた令和版所得倍増計画が所信表明演説から蜃気楼(しんきろう)のように消えた。積極財政への転換の経済政策を堂々と訴えていきたい」と語った。(沢田大典、原川貴郎)