〈独自〉研究費不正問題の京大霊長類研が解散へ - 産経ニュース

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〈独自〉研究費不正問題の京大霊長類研が解散へ

京都大霊長類研究所は、長年にわたって霊長類研究を牽引してきた=愛知県犬山市
京都大霊長類研究所は、長年にわたって霊長類研究を牽引してきた=愛知県犬山市

京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)のチンパンジー用飼育施設をめぐる研究費の不正支出問題を受け、京大が来年3月に霊長研を解散する方向で調整していることが14日、複数の大学関係者への取材で分かった。今月中にも正式決定し、詳細を明らかにする予定。昭和42年の設立以来、50年以上にわたって霊長類研究を牽引(けんいん)した「京都大学霊長類研究所」の名称が今年度で消える見通しとなった。

関係者によると、京大は来年3月に霊長研を解散。今ある研究分野は新設する研究センターのほか、京大の野生動物研究センターや理学研究科といった既存の研究機関や研究科に再編する。犬山市の研究施設は今後も利用を継続するが、定年退職する教員の後任は補充せず、在籍する教職員や研究用に飼育するサル類を順次減らしていくという。

問題をめぐっては、京大は昨年6月、飼育施設の設備工事で架空取引や入札妨害があり、約5億円が不正支出されたと認定する調査結果を公表。同年11月には、会計検査院が京大の認定分を含め、総額約11億3千万円の不適切な支出があったと指摘していた。

京大は同年9月、不正支出が認定された研究費の一部を支給した日本学術振興会に対し、罰金にあたる加算金を含めた約9億円を返還。他の補助金や交付金についても文部科学省が返還請求額を精査し、総額はさらに膨らむと予想される。京大は霊長研を解散して人員削減などを進めることで、返還費を捻出する狙いがあるとみられる。

霊長研の湯本貴和所長は産経新聞の取材に「何も答えられない」と話した。

京大は、関与した元所長の松沢哲郎氏(70)=懲戒解雇=ら計6人を懲戒処分。松沢氏が地位確認などを求めて京都地裁に提訴している。

世界の霊長類研究を牽引

霊長研は、人間の起源と進化の解明を目指す、国内唯一の霊長類の総合研究拠点。全国の研究者の共同利用研究所として昭和42年6月に愛知県犬山市に設立され、生態学や認知科学といった多様な学問から、人間やチンパンジー、ボノボなどの研究を通じて「人間とは何か」を探究している。

53年に始まった天才チンパンジー、アイの研究で知られるほか、世界的な霊長類研究者も数多く輩出。ゴリラ研究の第一人者で京大前総長の山極寿一(やまぎわ・じゅいち)氏も、63年から10年間、助手として勤務していた。ワニの発声原理の解明に貢献したとして昨年、霊長研の西村剛准教授がイグノーベル賞(音響学)を共同受賞したことも記憶に新しい。

日本の霊長類研究のルーツともいえる京大の研究は、国内研究の基礎を築いた文化勲章受章者で京大教授だった故今西錦司氏が、昭和23年に宮崎県・幸島でニホンザルの調査に乗り出したことに始まる。研究費不正の学内調査結果を公表した昨年6月の記者会見で湊長博総長(当時理事)は、「京大の霊長類研究は古い歴史を持ち、京大にとって非常に重要な研究領域であり続けている」と評価した一方で、霊長研のあり方については「どのような組織体制に改善するかは全学的に議論した上で決定する」と述べていた。(桑村大)