鑑賞眼

「フィアース5」 生身の肉体と精神の交流

仲間の手によって宙吊りにされる皆川まゆむ(大洞博靖撮影)
仲間の手によって宙吊りにされる皆川まゆむ(大洞博靖撮影)

いっそ暴力的なスポットライトに照らされ、空間に緊張感が満ちる。若者はピンと張られた綱の上に足を乗せ、よろめきながら渡り切った。

若き日仏サーカスアーティストのコラボレーション企画「French Circus Focus 2021 フランス×日本 現代サーカス交流プロジェクト」として上演された。ラファエル・ボワテル構成・演出。

皆川まゆむ、長谷川愛実、杉本峻、目黒陽介、吉川健斗の5人によって、綱渡りのほか、ダンスやエアリアル、アクロバットやジャグリングといったサーカスのテクニックが次々と披露されていくが、いずれも最初はどこか頼りなく、もどかしい。

それもそのはず、今作は「七転び八起き」がテーマ。ダンスやパントマイムの要素を取り入れ、滑って落ちて転んで縺(もつ)れて叫んで、それでも立ち上がり、挑戦を続けていくサーカスアーティストの姿を描いている。

暗闇とのコントラストが際立つ、照明の使い方が印象的。例えば、長谷川のエアリアル。カメラのストロボがたかれているような、点滅する光のなかに、つり下げられたフープに巻き付く肉体が浮かび上がり、その姿が観客の脳に焼きつく。

相手に対して無責任さと親身さが混在している5人の関係には、努力の主体性の在りかについて、不穏な気配も漂う。独創的な装置を使い、テクニックの上達を励ます仲間の手によって空中につられ、激しく苦悶(くもん)する皆川の姿には、周囲からの期待に対するしがらみやままならなさといった、社会での生き辛さも感じた。

悪戦苦闘の結末、5人が大喜びでサーカスの本番の衣装に着替える様子を見て、彼らの努力が報われたことを知る。コロナ禍で縁遠くなった、生身の肉体と精神の交流と、エネルギーの発露が、そこにはあった。

9日~11日。東京都世田谷区の世田谷パブリックシアター。(三宅令)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。