朝晴れエッセー

片目のダルマ・10月14日

今までの人生で、一番うれしかったことは何ですか、と尋ねられたら、私は「家庭裁判所の離婚調停で半年後に中1の次女の親権が認められたとき」と、60歳を超えた今でもその気持ちは変わらない。

高1の長女は同じく家庭裁判所へ土砂降りの中、母親を親権者に選ぶサインをしに来てくれたので、その日から母と娘3人の生活がスタートした。

経済的には楽ではなかったので、ガス代節約のため朝シャン禁止令、食費節約のため、菓子パン禁止令を布告しては娘2人と衝突もしたが、それでも楽しかった。

やがてそれぞれ短大と専門学校を卒業、就職と巣立ってくれた。数年後には次女の結婚、初孫出産と幸せだけど、気になるのは1人暮らしの長女のことだ。

結婚が人生の幸せとは離婚した母親からは言われたくないだろう。1人で生きていくのも本人が納得する生き方であればそれもまた人生と思っていた。

そんな矢先、久しぶりに長女とランチをしたら「付き合っている人からプロポーズされた。ここから3時間ほどの他県に年内に嫁ぐつもりだ」と聞かされた。

子供の年齢がいくつであっても心配しない親なんていない。私は小さなダルマを買って次女が結婚したときに片目を黒く塗った。やっとダルマのもう片方の目を塗ることができそうだ。

雪深い県から娘の恋人が挨拶に来る日を楽しみにしている。そして幸せな家庭を2人で築いてほしい、と切に願っている。

和田宏子 61 横浜市港北区