作家、司馬遼太郎の名作を映画にした「燃えよ剣」が、15日から全国で公開される。舞台は幕末。新選組の土方歳三(ひじかた・としぞう)の半生を通じて、時代の転換期に人はどう生きるべきかを問う。土方を演じ、「最高の自信作」と映画を語る岡田准一(じゅんいち、40)に話を聞いた。
岡田は人気アイドルグループ、V6(ブイシックス)の一員。映画も「木更津キャッツアイ」シリーズや「関ヶ原」など多数に主演し、近年は殺陣も指導。世界に通じるアクション映画作りに意欲を示す。
「燃えよ剣」への思いは、ひとしおだ。司馬の原作も愛読し、幕末や土方の生き方への関心も高い。
「この映画は、僕のいちばんの自信作。〝岡田史上〟いちばんかっこいい、魅力的な男性を演じている。司馬先生も、『燃えよ剣』や土方のファンも認めてくれるはず。誰よりも土方本人に認めてもらえることを心がけた。これで駄目だといわれたら、僕にはもうやりようがない」と言い切る。
監督は、原田眞人(72)。平成29年公開の大作「関ヶ原」でもタッグを組んだ。
「劇映画と記録映画を両立させたいのが原田監督。撮影現場で起きる予定外の出来事も映像に収めたいと考える人。非常に指導が厳しい監督といわれますが、映画館で上映するのにふさわしい作品を作りたい意欲の表れ。映画に携わる人間にとっては、幸せな撮影現場です」と振り返る。
だが、幕末の男たちの生き方が、令和の現代人に何を伝えるというのか?
「新しいものを生み出し続けた時代から、バイオテクノロジーやインターネットなど、すでにあるものをどう活用するかが試される新しい時代の幕が開いた。現代は幕末と同じ転換期だと思う。誰もが何かを試されている。そこで、個人がどう生きるのかということです。僕も、この映画で何かを試されているのかもしれない」と答える。
映画では、多摩の農家の悪童たちが剣術を学び、つれだって京都に上り、江戸幕府のため命をかけて剣をふるう。だが、転換を求める時代の波に押され、戦に敗れ、友を失う。それでも土方は戦い続ける。
「土方は、やばいやつ。自分との共通点なんてない」と笑う。だが、司馬が土方に語らせた「男の一生というものは、美しさを作るためのものだ」という言葉を挙げて、こう語る。
「時代に試されるなか、土方は自分の生き方を貫いた。完全な人生ではなかったけど、不完全であることの魅力に僕はたまらなくひかれる」
共演は、近藤勇(いさみ)に鈴木亮平、土方と思い合う女性、お雪に柴咲(しばさき)コウ、沖田総司(そうじ)に山田涼介。(石井健)
おかだ・じゅんいち 昭和55年生まれ、大阪府出身。平成7年、V6の一員としてCDデビュー。映画は「SP 野望篇/革命篇」「図書館戦争」「永遠の0」「散り椿」など多数。ドラマもNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」などで主演。V6は11月1日をもって解散する。
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15日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。2時間27分。