【大森由紀子のスイーツの世界】お菓子のオートクチュール - 産経ニュース

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大森由紀子のスイーツの世界

お菓子のオートクチュール

カレーム時代の複雑な型
カレーム時代の複雑な型

近現代フランス菓子の礎を築いた代表的な3人といえばアントナン・カレーム、ガストン・ルノートル、ピエール・エルメでしょう。

フランス革命後にパティスリーができ、カレームの活躍で、フランス菓子は大いに発展を遂げますが、第二次世界大戦後にルノートルが登場するまで、味の面ではあまり進化がありませんでした。

カレームは見栄えを重視。その出来栄えが力関係を左右する権力者たちの宴会を盛り上げました。そのため、奇抜で見た目にこだわったお菓子の型を注文して作らせていました。

かたや町のパティスリーが使うお菓子の型はどんどんシンプルになり、見習いでもすぐ抜けるようなものになっていきます。しかし、味には進化がありませんでした。そこで登場したのがノルマンディーからやってきて、乳製品を知り尽くしていたルノートルです。お菓子を軽く、おいしく、しかも同じ品質で大量に作れるようにしたのです。これには当時発展した、冷凍技術が大いに貢献しています。

その後、1980年代から90年代にかけては、何層ものムースと生地を重ねて長方形にカットするお菓子が全盛期を迎えます。そこに現れた革命児がエルメです。彼が考案した「ケーキの上のさくらんぼ」は衝撃的でした。背の高い三角柱に似たお菓子で、側面が3方に倒れる専用箱もあつらえました。カレーム以来のデザイン性のあるお菓子は、まさにお菓子のオートクチュールといえます。

おおもり・ゆきこ フランス菓子・料理研究家。「スイーツ甲子園」(主催・産経新聞社、特別協賛・貝印)アドバイザー