「牛が好き」酪農家3代目はチーズ職人 - 産経ニュース

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「牛が好き」酪農家3代目はチーズ職人

店の前で牛のぬいぐるみを抱える三宅さん。写真撮影のときはもちろん「はいチーズ」=9月30日午後、岡山県倉敷市
店の前で牛のぬいぐるみを抱える三宅さん。写真撮影のときはもちろん「はいチーズ」=9月30日午後、岡山県倉敷市

祖父の代から続く酪農家の3代目で若手チーズ職人、三宅春香さん(26)が今年5月、岡山県倉敷市の牧場で、チーズ専門店「倉敷チーズ工房ハルパル」をオープンし、人気を呼んでいる。子供のころから牛舎が遊び場だったという三宅さんは牛が大好き。三宅さんは「チーズ作りを通じ、牛や酪農の魅力を伝えたい」と話している。

リピーターも

餅のように伸びる大きな白いチーズを1個分になるようちぎって、丸くこねて次々と台の上に並べていく。三宅さんが経営するハルパルのチーズ作りの風景だ。

ハルパルは今年5月2日、倉敷市玉島陶(たましますえ)で三宅さんの父、安史さん(63)と母、加寿美さん(59)が経営する三宅牧場の一角に三宅さんがオープンしたチーズ専門店だ。

若い女性職人が経営する店として、また、搾りたてのミルクを使った新鮮なチーズを提供する店として話題となり、次々とネットや電話を通じて予約注文が入るようになった。毎週日曜には商品を受け取りに約50組の来店客が訪れる人気店だ。

商品の一つ、モッツァレラチーズのおすすめの食べ方を聞くと「わさびじょうゆでも、みそ汁に入れてもいいし、デザートとしてならハチミツをかけてもいい」という。「チーズを食べておいしいといってくれるのが何よりうれしい」と三宅さんは笑顔を見せる。

丸く形を整えたチーズを並べる三宅さん。チーズはこの後、燻製する
丸く形を整えたチーズを並べる三宅さん。チーズはこの後、燻製する
牛舎が遊び場

三宅さんの祖父の代、昭和33年から続く三宅牧場は55頭の乳牛を飼育。酪農家の父母の3きょうだいの末っ子として生まれた三宅さんは、小さなころから牛舎が遊び場だった。両親のまねをして、餌をあげたり搾乳したりするなどして、乳牛に親しんで育った。自然と酪農への関心が高まり、岡山県立高松農業高、北海道の酪農学園大と進学した。

酪農への知識を深め、業界について学ぶ中で、生乳の販売だけでは牧場経営は難しいということも理解するようになった。牛の餌となるトウモロコシなどの穀物相場は、原油などの価格が上昇すれば値上がりするが、生乳の買い取り価格は同じようには上がらない。その分のコストは酪農家が引き受けざるをえない状況がある。

三宅さんは、酪農家も自前で付加価値のある商品を提供する必要があると考えるようになった。付加価値のある商品として三宅さんが選んだのはチーズだ。

器具を使って搾乳している三宅さん(チーズ工房ハルパル提供)
器具を使って搾乳している三宅さん(チーズ工房ハルパル提供)

チーズは原料が生乳のナチュラルチーズと、ナチュラルチーズを原料に乳化剤などを加えて成型するプロセスチーズに大別される。三宅さんは、原料である生乳の味が生かせるナチュラルチーズで勝負したいと思うようになった。

それは尊敬する両親の作る生乳の質に自信があるからだ。三宅牧場の生乳は今年5月、中国生乳販売農業協同組合連合会の良質生乳出荷者表彰で、優良賞を獲得している。

すべて1人で

5月のオープン以来、高品質の生乳から作った三宅さんのチーズは好評。新聞などで取り上げられたこともあり、経営としてはうまくいっている。

販売している3種のチーズ。「モッツァレラ」、「スカモルツァの燻製」、「フロマージュ・ブラン」(上から時計回り)
販売している3種のチーズ。「モッツァレラ」、「スカモルツァの燻製」、「フロマージュ・ブラン」(上から時計回り)

だが、三宅さんは現状に満足しているわけではない。製造・販売・経理をすべて1人で行っているため「今は商品を食べやすいチーズ3種に絞り、くせの強いチーズ作りを避けている」という。いずれは人を雇い、香りの強いものも含めた多様なチーズ作りに取り組みたいと考えている。

三宅さんは「チーズ作りを通じて、牛や酪農の魅力を消費者に伝えたい。この牧場から倉敷の酪農を発信していきたい」と話している。(高田祐樹)

商品は「モッツァレラ」(税込み600円)▽「スカモルツァの燻製」(同680円)▽「フロマージュ・ブラン」(同350円)▽「チーズ3種セット」(同1500円)。問い合わせは、倉敷チーズ工房ハルパルのウェブサイトかメール(info@kurashiki-cheese.com)。