米政界で対パキスタン議論 圧力か孤立回避か

バイデン米大統領(AP)
バイデン米大統領(AP)

【ワシントン=大内清】イスラム原理主義勢力タリバンによるアフガニスタン掌握を受け、バイデン米政権が、対テロ戦争の「重要同盟国」と位置付けられてきたパキスタンへの政策見直しを進めている。同国が米国の援助を得る一方で、タリバン支援を続けていたためだ。議会ではパキスタンへの〝懲罰〟を主張する声が出ているが、専門家らには同国を孤立させれば大規模な地域紛争を招く危険があるとの慎重論が強い。

米下院外交委員会で5日に行われた公聴会では、議員と外交・安全保障の専門家らの間でパキスタン関与のあり方が議論となった。

トランプ前政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めた証人のマクマスター氏は「パキスタンへの支援を停止して孤立させ、タリバンなどジハード(聖戦)勢力を保護した責任を負わせるべきだ」と述べ、民主、共和両党の一部議員が同調した。

反論したのは、同じく証人として出席したアーミテージ元国務副長官らだ。

アーミテージ氏は、パキスタンの孤立は中国、インドの領有権争いも絡む係争地カシミール地方の不安定化を招くと警告。駐パ、駐アフガン両大使などを歴任したクロッカー氏も「パキスタンを罰する(外交政策上の)余裕はない。カシミールの暴発は中印パの地域戦争に発展する」と証言した。

こうした議論が熱を帯びるのは、アフガン政策の失敗はパキスタンが原因だとの見方があるためだ。

米国は「テロとの戦い」にパキスタンの協力は欠かせないと判断。米メディアによると2002年以降、計330億ドル(約3兆6700億円)以上の軍事・経済支援を供与してきた。

一方、1990年代のタリバン創設にも関与したパキスタンは、したたかに立ち回った。2001年のタリバン政権崩壊後も自国内に拠点を提供。タリバンを手駒に地域情勢への影響力を強め、対立するインドを牽制(けんせい)するといった狙いがあった。タリバンが米軍やアフガン政府との戦闘を継続できたのは、パキスタンでの戦闘員徴募や訓練、武器調達が可能だったからだ。

こうした経緯から、タリバンのアフガン掌握で利益を得たのはパキスタンであるようにも見える。だが、事態はさらに複雑だ。

アフガン駐在経験のある外交筋は「勝利したタリバンが制御不能になるのを最も懸念しているのは、実はパキスタンだ」と語る。

同国内には、タリバンの影響で誕生した「パキスタンのタリバン運動」(TTP)などの過激派が存在する。それらが今後、パキスタン政府への攻撃やインドへのテロなどを行うため、アフガン領を安全地帯として利用する恐れは強い。タリバンがパキスタンを利用したのと同じ構図だ。

米政界で対パ非難が強まる中、ブリンケン国務長官は9月、米パ関係を「再評価」すると表明した。だが、パキスタンが孤立感を強めれば、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて域内の影響力を高める中国との関係緊密化を一層促すことにもつながる。

パキスタンのカーン首相の安全保障補佐官を務めるユースフ氏は今月、米外交専門誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿で、対パ非難の高まりは米国など西側諸国がアフガン政策失敗を糊塗(こと)するための「スケープゴート」探しだと批判した。