チーム学校

学校司書 本と人つなぐ図書館の番人

やがて毎回200人以上の生徒が訪れるようになった。生徒が雑談の中で漏らした言葉を受け止め、臨床心理士ら専門家の個別相談や就労支援につなぐ仕組みも作った。

「これまでにお父さんが6人いた」「お金がないから修学旅行に行ったことがない」。図書館に併設され、松田さんが執務を行う司書室で、生徒が切迫した様子もなくぽろっと打ち明けることがある。

学校司書は教師ではないため、生徒を評価したり指導したりしない。その存在を求めて訪れる子もいる。そして、図書館という空間だからこそ、学校外の大人も出入りする「カフェ」というスタイルが馴染(なじ)む。

松田さんはいう。「学校図書館は外部に開く『窓』。本と出会い、人と出会い、文化的なシャワーを浴びられる場所。すべての生徒に使う権利があり、全員がVIPです」

7割に配置「魂の安息を与える」

学校図書館について話す神戸女子大の久野和子准教授
学校図書館について話す神戸女子大の久野和子准教授

学校図書館は、昭和28年に定められた学校図書館法で「学校教育において欠くことのできない基礎的な設備」とされ、すべての小中高校に設置が義務付けられている。同法は図書館の役割として子供の教養面も挙げるが、神戸女子大の久野和子准教授(図書館情報学)は「現状はあまりに教育の側面に偏っているのではないか」と指摘する。

久野准教授によると、「図書館は学校の中で最も民主的で、公共的で文化的な場所」。医療的に子供を支えるのが保健室なら、図書館は「魂の安息を与える居場所」だという。「生徒は本を読むことで世界を広げ、将来に希望や夢を抱くことができる」

図書館の姿は、学校を映す鏡でもある。校内暴力などが社会問題になった昭和50年代は「図書館が活用されず衰退し、『本の倉庫』となっていた」と久野准教授。平成に入って図書館の価値が見直され、平成26年には、図書館業務に専従する学校司書の配置が自治体の努力義務となった。

久野准教授は「図書館が子供の居場所として機能するためには、生徒と本や人をつなぎ、秩序を守る学校司書が常駐することが必要」と話す。学校司書を配置する学校は増えているが、昨年度の文部科学省の調査では全体の7割にとどまっている。

司書教諭は配置義務化も常駐は困難

配置が必須ではない学校司書と違い、平成15年以降、12学級以上ある学校すべてに配置が義務付けられているのが「司書教諭」だ。教員免許を持ち、専門の講習を修了した教諭だが、自身の担当教科などと兼務しており、図書館に常駐できないことが多い。

大阪府立北野高校(大阪市淀川区)で司書教諭を務める桝井英人教諭(58)は、各地で学校図書館の利用促進に尽力してきた。保健室とも連携し、教室に入りにくく不登校になった子供が図書館に登校できるようにした経験もあるが、課題も感じている。「司書教諭は授業があれば教室に行かなければならず、生徒だけを図書館に残すことはできない。常駐する大人がいないと、生徒の居場所としての機能は薄まる」

生徒と図書館の距離を近づけるために桝井教諭が同校で取り組んでいるのが、生徒有志による「図書館サポーター」だ。現在は生徒20人以上が本の紹介や選書会議に加わり、同校全体の貸し出し数が3倍に増えた。「安心できる図書館の実現には、誰かが見守っていることが大切。何もしなくても生徒が来るわけではない」と実感を込めた。(地主明世)

■連載「チーム学校」は第2第4水曜、学校を起点に子供を支援する各専門職の現場から、子供たちの抱える困難の実態や解決策を考えます。次回掲載は10月27日、スクールポリスのかかわる現場を取り上げます。皆さんのご意見、ご感想を募集します。住所、氏名、年齢、性別、電話番号を明記の上、郵送の場合は〒556―8661(住所不要)産経新聞大阪社会部教育班、FAX06・6633・9740、(メール)kyouikuhan@sankei.co.jpまでお送りください。