主張

米国の対中交渉 身勝手許す妥協は禁物だ

バイデン米政権が「唯一の競争相手」と位置づける中国との具体的な外交交渉に動き始めた。

米通商代表部(USTR)のタイ代表が中国の劉鶴副首相との8日の電話会談で貿易協議を再開させ、互いに課している制裁関税の扱いなどを話し合った。

6日には、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中国外交トップの楊潔篪共産党政治局員とスイスで協議し、首脳会談をオンライン形式で年内に開催することで合意した。

バイデン政権は中国に対し、不公正な貿易慣行をはじめ、国際ルールを無視した海洋進出、少数民族や香港民主派の弾圧などで懸念を表明し、是正を求め制裁などの強い措置で圧力をかけている。

中国は「内政干渉」などと独善的な理屈を振りかざして反発するが、両国が非難の応酬に終始していては事態は動かず、いずれ話し合いの席に着かねばならない。

米中交渉の目的はあくまで、中国の身勝手な振る舞いをやめさせることだ。重要なのは交渉そのものでなく、成果である。ルール違反や人権無視の容認につながるような妥協は一切禁物である。

バイデン政権は対中外交交渉に先駆けてアフガニスタン駐留米軍を撤収させ、米国が重視する「インド太平洋」地域に、より大きく力を配分できるようにした。

中国抑止のため、同盟・友邦諸国との一層の連携強化も進めた。安全保障の新たな枠組みである英国、オーストラリアとのオーカス(AUKUS)創設と、日本、豪州、インドの首相を招いて開催したクアッドの首脳会合は、取り組みの成果を象徴するものだ。

アフガン撤収の際には、多くの出国希望者を現地に残すという大きな失態もあった。だが、中国と外交交渉に入る環境を短期間で整えたことは評価したい。

中国は来年2月に北京五輪開催を控えている。加えて習近平国家主席には、来秋の共産党大会で党総書記の続投を決めたい思惑がある。米国が対中外交を優位に進めるには、こうした中国の事情にうまく対応する必要がある。

中国による覇権追求を抑止するには、米国と同盟・友邦諸国の強固な連携が欠かせない。岸田文雄首相にも当然、そうした覚悟が求められる。米国が中国に過剰な妥協をしないよう支えていくことも日本の重要な役割である。