【ビブリオエッセー】神に導かれた教育者 「新島襄自伝―手記・紀行文・日記」同志社編(岩波文庫) - 産経ニュース

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神に導かれた教育者 「新島襄自伝―手記・紀行文・日記」同志社編(岩波文庫)

幕末から近代国家建設へ、巨大なマグマが動き始めた新しい日本で、キリスト教精神に基づく教育に情熱を燃やした新島。本書は、米国への密出国に至る前から始まる手記や外遊記、日々の記録などを集めた時代の貴重な証言だ。

かつて大河ドラマ『八重の桜』を見て、最初は主人公の山本八重に、その後、八重の夫である新島襄に関心をもった。父が同志社に学んだことも頭の隅にあり、新島の肉声を聞きたいと思い、この本を手に取った。

列強の脅威が及び始めた日本の将来に危機感を持った若き安中藩士、新島。聖書との運命的な出会いが生き方を決める。「天父」という言葉を知り、「私にとって神は単なる世界の創造主以上の存在として感じられた」と書く。もっと英語を、キリスト教を、アメリカを知りたいと切望し、函館から単独でアメリカへ、国禁を犯して命懸けの密出国の道を選んだ。

熱い思いは篤志家、ハーディー氏の心を動かし、様々に支援を得たが、アメリカでの生活やアーモスト大学などに在学中の日記などは残念ながら残っていないそうだ。

伝道者として帰国した新島は同志社大学設立に向けて精力的に活動する。私が興味をもったのは新島の協力者に明治政府の要人ら多士済々が名を連ねていることだ。

密航を手助けした一人が「クリル諸島海線見取図」を作成した福士成豊、新島に洗礼を受けて実業家に転身した大沢善助は元俠客で同志社女学校の危機を救う。大隈重信や八重の兄、山本覚馬、渋沢栄一など枚挙にいとまがない。

「人の偉大さは学識だけでなく、私心のなさに現れる」「磨く前のダイヤモンドのようであれ」…新島の生き方を示す数々の箴言が心に沁みる。

奈良県橿原市 上田龍男(58)

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