野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志

自分が輝ける道を選ぶ

今季最終戦で46号となる本塁打を放つエンゼルスの大谷。今季は大活躍のシーズンになった=10月3日、シアトル(AP=共同)
今季最終戦で46号となる本塁打を放つエンゼルスの大谷。今季は大活躍のシーズンになった=10月3日、シアトル(AP=共同)

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平の今季のプレーには本当に楽しませてもらった。投手として9勝を挙げ、打者として46本塁打、100打点、26盗塁。投打の「二刀流」で、予想をはるかに上回る活躍を見せてくれた。

ただ、本塁打王争いを演じた終盤は相手投手に何度も敬遠四球で勝負を避けられたのが惜しかった。エンゼルスのチーム成績はア・リーグ西地区4位。強打者がそろうチームで優勝争いを続ける中でやっていたなら、成績はさらに伸ばせたと思う。

大谷自身、チームの低迷は自分の力だけでどうにもならない面があると感じたのではないだろうか。シーズン終盤にはエンゼルスへの愛着を示しながらも、勝利を渇望する胸中をあらわにしていた。米大リーグの野球殿堂入りが確実視されるほどの偉大な成績を残したイチロー(マリナーズ会長付特別補佐)も、ワールドシリーズには縁がないまま現役を終えた。一人がMVP級の活躍をしてもチーム成績に直結しないところに野球の奥深さがある。

僕が中日で現役生活を送った頃はクライマックスシリーズ(CS)がなく、後半戦に「消化試合」を戦うことも結構あった。秋を迎えても日本シリーズを目指して頑張れる選手をうらやましく思っていた。フリーエージェント(FA)制度がなかった当時は、プロ野球選手は「チームに骨をうずめる」という気持ちでやるしかなかった。今は違う。選手は置かれた立場や状況によって働き場所を変えていく時代になった。実力のある者は自分をより生かせるチームでプレーする道を選ぶことができる。

大谷は今年2月にエンゼルスと2年契約を結んでいて、来年の今頃は、どの球団に所属して野球をやるのか、大いに注目を集めるはずだ。常勝球団といわれる強いチームで毎年のように優勝争いを演じれば、シーズンの最後まで野球をやれるし、自身も一層輝ける。

米国では「チーム愛」を貫いて一つの球団に留まり続ける選手は少ない。大谷も環境面やチームへの愛着にとらわれることなく、自分がさらに輝ける環境でプレーする道を選んでほしい。一人のファンとして期待も込めての僕の願いだ。(野球評論家)