点滴連続死初公判詳報

(4)完「事件、発覚してよかった」

点滴連続中毒死事件の初公判で、傍聴券の抽選に向かう人たち=1日午前、横浜地裁
点滴連続中毒死事件の初公判で、傍聴券の抽選に向かう人たち=1日午前、横浜地裁

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《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、高齢の入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の裁判員裁判第6回公判は、検察側の被告人質問が続いている》

《各事件への対応や詳細に関する質問が終わり、話題は久保木被告の事件当時の精神状況や、逮捕時の心境などに及んだ。3人目の被害者となった八巻信雄さん=当時(88)=が死亡した際、点滴が泡立っていたことがきっかけで混入が発覚し、平成28年9月21日に警察が捜査を開始。久保木被告は捜査に気づいたのは、同僚との会話だったという》

検察「気持ちの変化はあったか」

久保木被告「覚えていません」

《その後、報道機関による取材も過熱。自身にも取材が殺到したという》

検察「思ったことはあるか」

久保木被告「大変なことをしてしまったと思いました」

検察「自身も取材を受けたか」

久保木被告「依頼が来たが、お断りしている状況でした」

検察「怖いという気持ちはあったか」

久保木被告「あったと思います」

《その後、自殺を考えるようになったという久保木被告。病院からインスリンを持ち出したり、コートのベルトを輪っか状にして使用することを考えたというが、結局、実行することはなかった》

検察「怖いという思いはあったか」

久保木被告「多少はあったと思います」

検察「その後、病院で勤務できないなどのことはあったか」

久保木被告「事件発覚直後は、マスコミがアパートの前に殺到してしまって、出られないことがありました」

《久保木被告はその後、旧大口病院を退職。別の病院などでも仕事をしたが長続きせず、30年に逮捕された》

《ここで検察官が交代。被告が旧大口病院での勤務時、複数の病院に通い、睡眠導入剤を処方してもらっていたことを指摘した上で、被告の性格についてひもとこうとする》

検察「友人関係について質問する。幼稚園から中学までは、遊ぶ友人は多かったか」

久保木被告「少なかったです」

検察「高校では、親しい友人はできなかったと述べている。休み時間などは何をしていたか」

久保木被告「覚えていませんが、友人と集まってわいわいという感じではなかったと思います」

検察「病院において、例えば夜勤時の休憩室でほかの看護師と話して盛り上がることはあったか」

久保木被告「人によります」

検察「自身のコミュニケーション能力に関してはどう思うか」

久保木被告「(コミュニケーションをとるのが)苦手だと思います」

《検察はその後、久保木被告が事件前、同僚のエプロンの一部を切り取ったり、ゴム製の印鑑を針で傷つけたりするなどの行為に及んでいたことに言及。その理由を尋ねたが、被告から明確な答えが返ってくることはなかった》

《ここで再び休廷を挟み、弁護士、裁判員、裁判官が被告に質問を投げかけた。裁判官が「警察が来なかったら、このまま犯行を続けていた可能性もある」と問いかけると、久保木被告はこう答えた》

久保木被告「3人の方が亡くなっているので、適切かどうかはわかないですが、事件が発覚してよかったと思っています」

《この日の公判は、ここで終了。13日は検察側の請求で久保木被告への精神鑑定を担当した医師の証人尋問が行われる見通しとなっている。判決は11月9日に言い渡される予定》=おわり

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