落語にほとんど縁がなかった松岡修造さんが、テレビ番組で柳家小三治さんにインタビューすることになった。高座に出かけると、たまたま噺(はなし)の本題に入る前の「マクラ」には、テニスの錦織圭選手の試合が取り上げられていた。
▼「本当はここでとどめ刺しゃいいのに、躊躇(ちゅうちょ)して負けちゃう。でもそこがいいね!」。錦織選手の特質を見事にとらえ、しかも心地いい、と感心していた。時には1時間近くも続いてファンを喜ばせたマクラが、何より至芸の域に達していた滑稽噺が、高座で聞けなくなった。
▼人間国宝の柳家小三治さんが7日夜、自宅で急死した。古今亭志ん朝、立川談志亡き後、昭和、平成の落語界を牽引(けんいん)してきた名人は、生涯現役を貫き、来年1月まで予定が入っていた。