「今日出頭になります」。東京拘置所に収容された飯塚幸三元被告(90)は12日、東京都板橋区の自宅を出る直前、元被告の家族を支援するNPO法人の理事長に、緊張した声で電話をかけた。「家族のことを引き続き頼みます。あとはメールします」と言葉少なで、理事長に届いたメールには、過失を認めるコメントがつづられていた。
理事長は9月2日の判決後、元被告と毎日連絡を取ってきた。事故についてはほとんど話さなかったが、遺族だけでなく、元被告の家族も「もう争ってほしくない」と望んでいると伝えた。理事長は「自身の家族のこともよく考えた上での行動だと思う」と語る。
12日正午すぎ、自力で歩くことのできない元被告は、運転手らに支えられながら自宅の駐車場でタクシーに乗り込み、検察庁に向かった。茶色の帽子を深くかぶり表情はうかがえず、報道陣が一斉に車内にカメラを向けると、手で顔を覆った。