点滴事件 被告人質問

(1)睡眠薬を多めに服用…「夜勤翌日は動けず」

横浜の点滴連続中毒死事件の初公判が開かれた横浜地裁=1日午後
横浜の点滴連続中毒死事件の初公判が開かれた横浜地裁=1日午後

《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、高齢の入院患者3人の点滴に消毒液を混入させ中毒死させたなどとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の裁判員裁判第6回公判が12日、横浜地裁(家令(かれい)和典裁判長)で開かれ、昨日に引き続き、久保木被告に対する被告人質問が始まった》

《この日は検察側の質問が行われる。昨日質問した弁護側は、犯行時に心神耗弱の状態にあったと訴えているが、検察側は完全責任能力があったと主張している》

《昨日、紺色のスーツ姿だった久保木被告はこの日、第4回公判まで着ていたグレーのスーツで法廷に現れた。裁判長にうながされ、証言台の席に腰を下ろす。椅子の高さがあっていないのか、かかとが床から浮いているのが傍聴席からみえる。検察官が質問を始めた》

検察官「自分の性格をどう思うか」

久保木被告「内向的だと思います」

検察官「子供のころからか」

久保木被告「そうだと思います」

検察官「モノに当たることはあるか」

久保木被告「自分自身にいらいらして、壁を蹴ってしまったことがあります。看護師になってから、寮にいるころです」

《昨日の弁護側質問で「(看護学校での)実習が苦手だった」と話していた久保木被告。検察官は、その真意について質問を重ねる。被告の気質について掘り下げていきたいようだ》

久保木被告「教科書に書いてあるようなことは理解できるのですが、患者さんに合わせた看護ができませんでした」

検察官「応用が利かないということか」

久保木被告「はい」

《平成27年5月から働き始めた旧大口病院では、終末期の患者が亡くなると家族に説明をしなければならず、これまでの公判でも「(勤務時間外に)亡くなってほしいと思った」と、その動機を語っている》

検察官「気分が悪くて欠勤することは」

久保木被告「無断欠勤はありませんでしたが、気分が悪くてお休みをいただくことはありました」

検察官「睡眠薬を処方されていた。多めに飲むことはあったか」

久保木被告「医師から処方される2~3倍の量を飲んでいました」

検察官「調子が悪くなるのはどれぐらいの頻度であったか」

久保木被告「けっこう多かったと思います。夜勤明けの次の日は、ほとんど動けませんでした」

《負荷のかかった精神状態で勤務を続けていた久保木被告。続いて検察側は、第3回公判で読み上げられた元同僚看護師の供述調書の内容について確認していく。犯行が発覚する約5カ月前の平成28年4月、ある患者の容体が急変し、病院スタッフが家族から面罵されたことがあった。その場に久保木被告もおり、同僚看護師は「(久保木被告も)ストレスを感じていたと思う」と語っていた》

検察官「あなたが名指しで責められたわけではないのに、なぜ引きずったのか」

久保木被告「急変を最初に発見したのが私だったというのが大きいと思います」

検察官「(患者家族が)スタッフみんなにではなく、自分に言っていると思ったのか」

久保木被告「はい」

検察官「忘れられない出来事か」

久保木被告「はい」

検察官「自分が担当しているときに、患者が亡くなってほしくないと思うようになったのか」

久保木被告「はい」

《久保木被告の心の変化を確認するように質問を重ねていく検察側。話題は、最初の犠牲者である興津朝江さん=当時(78)=の事件に移ったが、ここで法廷に緊張が走った》

検察官「起訴された事件の前に、点滴に(消毒液の)ヂアミトールを入れたことはあるか」

弁護人「意義あり!」

《旧大口病院では、事件の約3カ月前から被告が担当していた4階だけで入院患者約50人が死亡し、1日に5人が亡くなることもあった。弁護人は、起訴された事件以外への質問は不当だと抗議。検察官は「動機形成のプロセスを確認するためだ」として譲らない。結局、裁判長が久保木被告に「この質問には任意で答えてください」と話しかけ、ここでいったん休廷に入った》

=(2)に続く