ビブリオエッセー

安易になびかない心構え 「従順さのどこがいけないのか」将基面貴巳(ちくまプリマー新書)

今年9月から「10代のための新シリーズ」として刊行が始まった新書の1冊である。文章は読みやすいが大人も十分考えさせられる内容になっている。

本書はタイトルにもあるように「従順さ」や「服従」に異を唱える。なぜいけないのか、どうすれば解放されるのか―。著者はニュージーランドにある大学の教授で専門は政治思想史。まず「政治」とは議事堂や官庁で行われる仕事だけでなく日常生活で経験することも「政治」だと書く。そして「権威」に言及する。

一般に日本人は同調圧力や権威に弱い。「空気」を読み、周囲に合わせようとする。しかしそれは、「安心するための服従」であり、「責任回避としての服従」だという。そして組織への忠誠心にも警鐘を鳴らす。

著者は『学問のすすめ』の一節や『論語』にある「諫言(かんげん)」、ナチスに対する白バラ抵抗運動といった実例を引き、服従しない、周囲に流されない個人の考えの大切さを訴える。そして不服従の姿勢の根底にはみんなのための「共通善(=公共善)」の思想があると書く。「しかたがない」は「消極的不正」なのだと。

現在のコロナ禍。日本では「自己責任」という考えが強いが、そこにはいかに他人に迷惑を及ぼすかという観点が欠けているという。

ノーベル平和賞に決まった2人のジャーナリストは圧政や不正を告発し、弾圧に屈しなかった。言論が封殺された香港のことを思う。私流に整理すれば不正や理不尽があれば言うべきことを言う、安易になびかない。ただし、なんでも不服従、反対ではないと思う。本当に信頼できる組織か、信頼するに足るリーダーなのか、慎重に見極める目が必要だ。

この本は日本人に、考えるヒントをくれる。

京都市右京区 佐々木清次(66)

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