《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、高齢の入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の裁判員裁判第6回公判は、昼の休廷を挟んで被告人質問が再開した》
《検察側は、2人目の被害者とされる西川惣蔵(そうぞう)さん=当時(88)=の事件について質問していく。久保木被告は犯行に及ぶ際、病室の見回りを行う「ラウンド」と呼ばれる通常業務を行っていた》
検察官「なぜ、ラウンドをやったのか」
久保木被告「理由は説明できません」
検察官「やらないと怪しまれると思ったからではないか」
久保木被告「覚えていません」
検察官「(逮捕直後の)平成30年7月25日にとられた調書では、『人に怪しまれるから』と答えているが」
久保木被告「覚えていません」
《逮捕当時の供述について、否定したり「覚えていない」「分からない」を連発する場面が目立ち始める》
《質問は、西川さんに消毒液のヂアミトールを注入した場面に移る。ほかの2人の被害者は、点滴袋にヂアミトールを混入されたことで中毒死したが、西川さんに対し久保木被告は、点滴の接続部に注射器で直接注入する「ワンショット」と呼ばれる方法を取り、殺害したとされる》
検察官「(ヂアミトールを注入するまで)どれぐらいかかったか」
久保木被告「数秒だったと思います」
検察官「犯行時、病室の扉を開けていた理由は」
久保木被告「細かい理由はありません」
検察官「(逮捕直後は)ドアを閉めるとかえって怪しいと、取り調べで話していたようだが」
久保木被告「記憶がありません」
検察官「(点滴袋に混入する方法と比べて)違う感情はなかったのか」
久保木被告「いいえ、ありませんでした」
《検察官は、ヂアミトールを直接注入することについて、「自ら手を下している」という感覚を被告が持っていたかどうか、確かめたかったとみられるが、久保木被告は抑揚のない声でこれを否定。裁判長がここでいったん、休廷を宣言した》