【点滴連続死被告人質問詳報】(1)患者の死に「気持ちの折り合い付けられず」 - 産経ニュース

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点滴連続死被告人質問詳報

(1)患者の死に「気持ちの折り合い付けられず」

横浜地裁
横浜地裁

《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、高齢の入院患者が点滴の投与直後に容体が急変し、相次いで亡くなった事件。消毒液を混入させて中毒死で殺害したとして、患者3人に対する殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の裁判員裁判第5回公判が11日、横浜地裁(家令(かれい)和典裁判長)で開かれ、久保木被告に対する被告人質問が始まった》

《1日の初公判で久保木被告は「すべて間違いありません」と述べ、起訴内容を認めた。弁護側は、被告が犯行時に心神耗弱の状態にあったとして責任能力の程度を争う姿勢を示している》

《6日の第4回公判まではグレーのスーツを着用していた久保木被告はこの日、紺色のスーツで法廷に現れた。前回まで手にしていたものと同じ、ベージュ色のハンドタオルを握りしめている》

《被告人質問を前に、弁護人が書証を読み上げる。事件後、久保木被告に鬱病や睡眠障害などの症状がみられたことから複数の薬品が投与されていたこと、収容されている拘置所内で「殺してやる、ここから出ていけ」といった幻聴に悩まされていたことなどが紹介された》

《読み上げが終わると、裁判長に証言台の前にくるよううながされ、久保木被告は小さくうなずいて席を立った。弁護人が質問を始める》

弁護人「看護師になったきっかけは何ですか」

久保木被告「母(のすすめ)です」

《小声で、しかし早口で質問に答える久保木被告。証言台の前にはマイクが設置されているが、声は非常に聞き取りづらい》

弁護人「自分は(看護師という仕事に)向いていると思いましたか」

久保木被告「いいえ」

弁護人「悩みを相談できる人はいましたか」

久保木被告「いいえ」

《久保木被告は平成17年、看護専門学校に入学。実際に患者と接するうち、「相手にどんな看護をすればよいのか」と悩むようになったという。平成20年4月に国家試験に合格すると、大口病院とは別の病院に就職が決まった》

《配属されたリハビリ病棟での業務は「大変だったがやりがいを感じた」というが、その後に担当した障害者を受け持つ病棟で、今回の事件の「伏線」になったとみられる経験をする。急変した患者に点滴をほどこす際、手間取って家族から責められたというのだ》

久保木被告「(家族から)『早くしてよ、死んじゃうじゃない』といわれ、ものすごく不安に感じました」

《被告は26年4月、精神科のクリニックを受診。抑鬱状態と診断され、休職した。同年8月に同じ病院のリハビリ病棟に復職したが、27年4月に退職。終末期医療を受け持つ旧大口病院に移ったのは、翌5月のことだった》

弁護人「終末期医療の仕事はどう感じたか」

久保木被告「患者が亡くなることが怖かったです。気持ちがしんどくなってしまいました」

弁護人「患者が亡くなることに接し、どう感じたか」

《久保木被告は下を向き、10秒ほど沈黙。その後、か細い声でこう答えた》

久保木被告「自分の気持ちとうまく折り合いが付けられませんでした」

《久保木被告は旧大口病院で、月に8~10回夜勤を務めていた。シフトが出るのは勤務の2~3日前だったという》

久保木被告「精神的にも肉体的にもきつかったです」

弁護人「辞めたいと思ったか」

久保木被告「はい」

《こう即答した久保木被告だったが、一方で、こうも付け加えた》

久保木被告「私のほかにも(同僚が)同じように勤務をこなしていたから(誰かに)相談できるような環境ではありませんでした」

《この日の被告人質問は40分に一度、休廷を挟むと裁判長から冒頭、説明があった。その40分がやってきて休廷が告げられると、傍聴人がいっせいに立ち上がった》

=(2)に続く