有吉佐和子邸、故郷和歌山で復元へ小説書いた書斎も

有吉佐和子(和歌山市提供)
有吉佐和子(和歌山市提供)

『華岡青洲(せいしゅう)の妻』『恍惚(こうこつ)の人』など数多くの名作で知られる和歌山市出身の人気作家、有吉佐和子(1931~84年)。今年は生誕90年の節目で、和歌山市では、かつて有吉が東京都内で住んでいた邸宅を市内に復元し、来年6月に開館する。今年11月には作品の魅力に迫るシンポジウムなども開催。市の担当者は「有吉が愛した和歌山の魅力を発信していきたい」とアピールしている。

設計図通りに再現

市などによると、有吉は昭和6年、和歌山市で生まれた。10年に東京に転居し、戦時中に一時和歌山に疎開したが、その後東京に戻り、59年に亡くなるまで東京都杉並区で過ごした。杉並区内では数回転居しているが、昭和36~54年ごろに住んでいた堀ノ内の邸宅は現存している。

市は平成26年、有吉の没後30年の特別展を開催し、有吉の長女で大阪芸術大学教授の有吉玉青(たまお)さんを招待。その際、老朽化した堀ノ内の邸宅の一部を和歌山に移築・復元する計画を説明し、玉青さんも了承したという。

移築先は南海和歌山市駅近くの市有地(伝法橋南ノ丁)に決定。堀ノ内の邸宅は取り壊しも検討されており、今年11月中旬にも、玄関や障子、窓枠の部材を移築する。庭の灯籠や手水鉢(ちょうずばち)なども譲り受ける。かつて書斎で有吉が使っていた机や本棚、私物の三味線、茶道具なども寄贈される予定だ。

有吉佐和子の復元邸宅の完成予想図(和歌山市提供)
有吉佐和子の復元邸宅の完成予想図(和歌山市提供)

復元される邸宅は木造2階建て、延べ約186平方メートルで、一般公開される。有吉が数々のベストセラー作品を執筆した書斎や、三味線などの趣味を楽しんだ和室などを再現。略歴や作品を紹介する展示室も設ける。

堀ノ内の邸宅はゼネコン大手・清水建設(東京)が施工しており、復元邸宅も同社が手掛ける。市の担当者は「堀ノ内の邸宅の設計図が残っているため、忠実な復元になるのでは」と期待を寄せる。

価値観に故郷の影響

今年は有吉の生誕90年の節目。和歌山市は日本ペンクラブとも協力し、有吉を顕彰するイベント「有吉佐和子の和歌山」を11月3日に開催する。

3部構成で、第1部では音楽と映像で有吉作品に登場する市内ゆかりの地などを紹介。第2部は有吉作品の魅力に迫るシンポジウムで、第3部は有吉の戯曲作品『石の庭』の朗読劇を予定している。

有吉を顕彰するイベント内容を発表する和歌山市の尾花正啓市長(左)=7月30日、市役所
有吉を顕彰するイベント内容を発表する和歌山市の尾花正啓市長(左)=7月30日、市役所

今年7月、イベントの内容を発表する会見にオンラインで出席した日本ペンクラブ会長の作家、桐野夏生(なつお)さんは「有吉の作家の〝芯〟には、常に若い娘の潔癖さのようなものがある。時代のつかみが早く、うまく物語に絡めた作品は普遍性があり、すごい作家」と高く評価した。

同じくオンラインで出席したノンフィクション作家、吉岡忍さんはシンポジウムに向けて、「(有吉には)日本の伝統や歴史に豊かさを見いだした作品も多く、そうした価値観の背景には故郷・和歌山が大きく影響していることを考察したい」と述べた。

盛り上がる機運

和歌山市では、和歌山城の北側にある「わかやま歴史館」の「市の偉人・先人」コーナーで、有吉の業績をパネルや写真などで紹介している。和歌山市民図書館にも「有吉佐和子文庫」のコーナーを新設し、有吉の生前の蔵書などを展示し、生誕90年を盛り上げている。

来年6月には、復元邸宅がオープンする。玉青さんは産経新聞の取材に、「母が独身の時、作家として生きていく決意で建て、ベストセラーの多くを書いた家が、母の愛した故郷で復元され、顕彰事業も行ってもらえるのはうれしく、ありがたい」と話した。

尾花正啓市長は「全国から訪れるファンが市内を巡ることで、有吉を育んだ紀州の魅力も感じてもらいたい」と地域の活性化につながることも期待している。(西家尚彦)