社寺三昧

古代信仰伝える「元伊勢」 檜原神社(奈良・桜井)

檜原神社には三ツ鳥居がある=奈良県桜井市
檜原神社には三ツ鳥居がある=奈良県桜井市

伊勢神宮(三重県伊勢市)の祭神、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が現在地に移る以前に一時的に祭られ、「元伊勢」と呼ばれる伝承地が各地にある。大神(おおみわ)神社(奈良県桜井市三輪)の摂社、檜原(ひばら)神社(同)は元伊勢となった「笠縫邑(かさぬいのむら)」の地と伝えられている。

神聖な三輪山を仰ぐ大神神社。その境内から山の辺の道を北へ歩くと、やがて檜原神社にたどり着く。お社はなく、樹林の前に3つの鳥居を横一列に組み合わせた三ツ鳥居があり、自然と拝みたくなる清浄な雰囲気に包まれている。

檜原神社からは西に二上山が望め、夕日の美しさで知られる=奈良県桜井市
檜原神社からは西に二上山が望め、夕日の美しさで知られる=奈良県桜井市

日本書紀によると、崇神(すじん)天皇の時代、宮中に祭っていた天照大御神の勢いが畏(おそ)れられ皇女、豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)に託して笠縫邑に神が降臨する神籬(ひもろぎ)を造って祭った。その後、天照大御神は垂仁(すいにん)天皇の皇女、倭(やまと)姫命に託され、宇陀、そして近江、美濃を巡って最終的に伊勢へと至ったとされる。

笠縫邑と伝えられる檜原神社では歴史を尊んで引き続き天照大御神を祭っており、大神神社の山田浩之権禰宜(ごんねぎ)は「真摯(しんし)に奉仕しており、自ずから気持ちも引き締まります」と語る。

そんな遥か昔の神の旅に思いをはせられる檜原神社の一帯は、大和国原が見渡せる高台となっている。

境内入り口の標柱(しめばしら)に張られたしめ縄の向こうには大阪府との境にある二上山が眺められ、三輪山から昇った日がこの山に沈むという荘厳さに浸ることができる。奈良盆地は小宇宙のように思われ、その落日の美しさに古代から多くの人が心を奪われてきた。

そこで思い出されるのは写真家、小川光三さんが著書「大和の原像」で唱えた「太陽の道」という言葉だ。檜原神社を中心に伊勢から淡路島まで一直線に神社などが並ぶといい、自然と一体となった古代人の生活と信仰心に思いを巡らさずにはいられない。

こうした歴史深い檜原の地には歌碑も点在している。

《古(いにしへ)にありけむ人も我がごとか三輪の檜原にかざし折りけむ》(柿本人麻呂)

この万葉歌は「昔の人も私たちのように檜原でヒノキの枝葉を髪に挿したことだろうか」といった意味。古くからこの檜原の地に人々が特別な思いを寄せてきたことがうかがえる。(岩口利一)

檜原神社 桜井市三輪。JR三輪駅から徒歩約30分。大神神社(0744・42・6633)。