都民の消防官・横顔(1)

全員で1つの現場収束 成城署 城所正消防司令補(55)

指揮隊車の前で無線を使う城所正消防司令補=世田谷区の成城署
指揮隊車の前で無線を使う城所正消防司令補=世田谷区の成城署

「出動したら、必ず帰ってこい」。ベテラン消防官の胸には、約20年前に殉職した先輩隊員の言葉が今でも残っている。

野球に打ち込んだ高校生活が終わりに近づき、就職先を決める際に「体を使って人の役に立ちたい」と思い、東京消防庁の門をたたいた。消防団員だった親戚の話から、消防官は「いち早く現場に行き、人助けをできる仕事だ」と考えていた。

入庁後は災害や火災の現場に駆け付け、消火や救護活動などに当たる警防業務に30年以上従事している。平成12年4月からは人命救助の専門部隊「消防救助機動部隊」(ハイパーレスキュー)に所属。同年に発生した北海道の有珠山(うすざん)噴火災害や、16年7月の新潟・福島豪雨など、全国各地の大規模災害や火災現場で活動してきた。

14年5月、警防技術の師でもあり、ときには一緒に酒を酌み交わすなど苦楽をともにしてきた先輩の酒井俊明消防司令長=当時(47)=が、大田区の不燃ごみ処理センターで起きた火災で命を落とした。

「信じられなかった」と涙をこらえながら振り返る。深い悲しみとともに、「われわれの仕事は生死が近くにあり、間違えればいつでも命を落とす。同じ思いを周りの人にさせてはいけない」と決意を新たにした。

現在は成城署で指揮担当として自らも最前線に立ち、消火や救助活動に当たる隊員に指示を出す。2千件以上の現場で活動してきた経験を生かし、危険な現場でも安全第一を最重視し、効率的な部隊配置をするように心がけている。

「消防は1人で活動できず、全員で1つの現場を収束させる、みんながヒーロー。携わった皆さんを代表して(今回の賞を)いただいたと思う」と語り、「警防業務に引き続き従事し、経験してきたことを生かして、後輩指導にも携わりたい」と力を込めた。(宮野佳幸)

きどころ・ただし 八王子市出身。昭和60年、東京消防庁入庁。尾久署、国分寺署などを経て平成27年10月から成城署。同庁に勤務する妻の玲子さん(52)と長女(26)、長男(23)の4人家族。欠かさず持たせてくれる玲子さんの手作りのお弁当が力の源という。