岸田文雄首相は11日の衆院代表質問で、就任後初の本格的な国会論戦に臨んだ。立憲民主党は枝野幸男代表らが質問に立ち、首相が掲げる格差是正を重視した「新しい資本主義」に疑問を呈したが、首相もすかさず反撃し論戦は過熱。首相は会期末の14日に衆院解散を断行する決意を表明しており、31日投開票の衆院選に向けた最後の国会攻防が幕を開けた。
「『(経済)成長なくして(所得)分配なし』だ。まずは成長を目指すことが極めて重要であり、その実現に全力で取り組む。それが民主党政権の失敗から学んだことだ」
首相は、自らの経済政策について「抽象的で具体策に乏しい」などと批判した枝野氏に対し、こう語気を強めて反論した。岸田政権は発足当初から分配重視の姿勢を取り上げられることが多く、経済の先行きに懸念する向きもあったが、改めて成長と分配を両立させる考えを強調することで分配に軸足を置く枝野氏との違いを鮮明にした形だ。
3日間に及ぶ衆参両院での代表質問は、首相にとって次期衆院選までの最初で最後の野党との論戦。首相は「与党を勝利に導かなければ(首相に)なった意味がない」と周囲に語り、枝野氏との直接対決になる今回の代表質問にも並々ならぬ覚悟で論戦に臨んだ。
代表質問では、新型コロナウイルス対策もテーマとなり、枝野氏は「私たちは水際対策の徹底やPCR検査の抜本的な拡充を繰り返し提案してきたが、自民党政権は2年近く無視し、感染拡大は繰り返された」と主張。さらに、自宅療養者が急増し、死者が相次いだ状況については「自民党政権の失敗と言わざるを得ない」と言い切った。
辻元清美副代表も、首相が9月の自民総裁選でコロナ禍に苦しむ国民の声をノートに書き込んできたというエピソードを踏まえ「景気対策のための補正予算は組まなくていいのか。国民の声をメモ帳に書いているようだが、首相のメモ帳にこんな声は入っていないのか」などと責め立てた。
ただ、東京都の新型コロナの新規感染者数は11日、今年最少の49人でワクチン接種などの政府の取り組みは一定の効果を挙げているとの見方が大勢を占める。首相も立民の攻勢に対し、「感染が落ち着いている今こそ、さまざまな事態を想定し、徹底的な安心確保に取り組む」とはねつけた。(永原慎吾)