点滴連続死被告人質問詳報

(4完)「身勝手な理由で命奪ってしまった」遺族に謝罪

点滴連続中毒死事件の初公判で傍聴券を求めて並ぶ人たち=1日午前、横浜地裁
点滴連続中毒死事件の初公判で傍聴券を求めて並ぶ人たち=1日午前、横浜地裁

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《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、点滴に消毒液を混入し、入院患者3人を中毒死させたなどとして殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の被告人質問が続いている》

《警察が捜査を開始し、初めて「事の重大さ」を理解したと説明した久保木被告。弁護人は、犯行前後に病院内でエプロンが切られたり、印鑑が壊されたりする事態が発生していたと指摘。久保木被告は、自分が行ったと認めたが、理由については「分かりません」と話した》

《久保木被告は28年11月ごろには実家に帰ったが、両親に犯行を告白することはできなかったという。同月末に大口病院を辞職、日雇いの仕事をするようになった。看護師の仕事をしなくなったのは、殺人を犯したと自覚したことで、看護師という職業を続ける資格がないと思ったからだという。そして30年、被告は犯行を自供した》

弁護人「なぜ自白したのか」

久保木被告「自分のしてしまったことを話す勇気が持てたからです」

弁護人「黙秘することもできた」

久保木被告「きちんと全て話すことが義務であり、弔いになると(思った)」

《久保木被告は逮捕後、自殺を図ったことがあった。理由を問われ、こう言葉を返した》

久保木被告「ひどいことをしてしまったと痛感して、恐ろしくなったからです」

弁護人「どのようにつぐないたいか」

久保木被告「考え続けたが答えが出せず、今もどうしたらいいか分からない」

《力なく答えた久保木被告。弁護人から「遺族が来ているが、言いたいことはあるか」と問われると、裁判長に対し「遺族の顔を見て発言したい」と願い出て立ち上がり、遺族らの方を向いた》

久保木被告「私の身勝手な理由で大切なご家族の命を奪ってしまい、申し訳ありませんでした。許して頂けないと思いますが、裁判ではおわびの気持ちをお伝えしたいと思っていました。本当に申し訳ありませんでした」

《久保木被告はこう話すと深く一礼をし、着席した》

弁護人「いつごろ心境に変化があったのか》

久保木被告「警察の捜査が入ったことが大きかった。そのときに正気に戻った気がします」

《ここで公判は終了。次回12日の公判では、検察側の被告人質問が行われる。きょうを含めて公判期日は計11回指定されており、11月9日に判決が言い渡される予定だ》=おわり

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