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文庫『国宝 上・青春篇、下・花道篇』

極道の家に生まれながら「日本の宝」といわれる歌舞伎役者にのぼりつめた男の一代記。芸術選奨文部科学大臣賞などにも輝いた話題作だ。

昭和39年、侠客(きょうかく)たちの抗争の渦中で生まれた主人公の喜久雄は縁あって関西歌舞伎の名家の養子に。美しい容姿で「女形」として頭角を現す彼を、血筋をめぐる確執やスキャンダルが襲う。栄光と絶望の間を行き来しながら、夢を追い求める喜久雄の半生がつづられる。読者を舞台の世界に引き込む艶のある語り口は人気作家ならでは。芸道を極め尽くした人間の孤独と悦楽が読後、心に残る。(吉田修一著、朝日文庫・各880円)